モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

17.悪役



「もう勘弁してよぉ」

「こんな地下に俺と友達になりに来たわけじゃないだろ?」廊下は大勢の参列者を捌くため広く作られていた。先程まで頭巾の中のゴランを苛んでいた雨音はもう別世界のものであった。

「喋るだけ損をするんだ、身をもってわかれ。家族の構成も喋っていたな」

「もうやめろっての!! 娘らに手を出す前に切り離してやっから。そういえば、ねえ、いくさのことどう思う?」「ふむ?」ゴランはアンジェリカがその腰に伸ばした手を引っ込めるまで待った。

「ふるさとが心配か」「ガイデンハイムの奥で、エサランバルの逆だから大丈夫だと思うんだけどね。……ああ、あたしまた余計なことを」

「今のは構わんよ。どうせ訪れたりしない。メルキアの民が軍の様子を教えてくれたら問いに答えてやるよ」

 アンジェリカは舌打ちすると話し始める。「兵隊はいけ好かないがいつも束になってるからね。あたしより強いかも」「オークは兵員多く性質はヒューマンより獰猛と聞くが、学が無く装備も不揃いと言われるな。大昔から」

「……あたしのこと言ってない?」「ええ、そうかあ」不意な問いにゴランは地下に声をあげた。

「へっ、おかしな声だしちゃって。オークの敗残兵がやけになってなだれ込んだりしないかな?」

「地上の厳重な警備が続くならすぐ捕まるさ」


「あと、あれだね。エルフたち。森の正義の味方みたいだから、せいぜいオークをせき止めてほしいよ」

「詐欺にひっかかりそうなおっかさんだな。ただで他人のために命をかける奴なんかいるかね」ゴランはあの夜に闇に浮かんだ赤い髪を想起している。大きな頭と、小さな頭。「どこに信用があるんだ?」

 灯火に紫の髪が揺らぐのだった。「なあに? 冗談だってば! 正義の味方とか、勇者なんて。ふっふっ!」

「だいたい、今の戦争を起こしたのはエルフなんだ」ゴランはアンジェリカに言い返す材料を探り当てた。

「あんた、落ち着いてるほうかと思ったけどそうでもないね、先生!」女はゴランの後ろ頭に言葉をかけてくる。

「どうせエルフもオークも関係ないことさ。仕事はすぐ終わる。さっさと家へ帰ろうぜ、おっかさん」ゴランは廊下の途中に大扉を見つけたので押した。

「ねえ、いつもいくさを起こすのはオークだったろ。だからオークはわるもん、ヒューマンとエルフは正義だろ。神聖皇帝の頃からそうじゃないか」

「関係ない話をするなと言うんだ。宿に帰ったら新聞を取れ」二人は数多の長椅子のそばを通り抜けていく。礼拝堂であった。

「新聞読むのは面倒だからさ、教えてよ」アンジェリカは天井を眺めながら器用に歩いている。地中を掘り上げて作った岩の広間に目を奪われているようだ。「あれ、宿に帰れるんだ。すぐ仕事じゃないの?」

「先方次第だからいいかげん気を引き締めろ」

「うわあ、もう目の前にいるの」ゴランは礼拝堂の片隅の扉を指差す。