エサランバルのロリエーンはぺたぺた纏わりつく。「フェリオンちゃんはこの勝負どう見てるわけ。ロリちゃん先生に発表してみんさいな?」 「まともな戦いとは思ってない」遠慮なくしなだれるピンクのエルフの重みに真紅の髪が歪む。「ほっほう」ロリエーンはエルフの耳をそばだてた。 「それよりもケフル城下の有様が俺の気を惹いてくれたよ。城勤めのヒューマンも同じく気にしているだろう。いや、身近に迫る火だ」 「バランの火ではないのね」サーラが割って入る。「雑兵が斥候に声を掛けて、斥候が茶飲み話みたいにするなんて、まったく」 「じゃあ〜〜仲間に入ってこなきゃいいじゃん」「は?」 「軍規はよい状態とは言えないけれど、フェリオンの物の考えにだけは賛成したいな」エルサイスがそばの席に座った。 「エルシ〜〜。お菓子食べる? ナーダがくれたやつだけどロリちゃんも気前よくあげちゃうの」 「早々に引き揚げましたこと、改めてお許しくださいますよう」 「うん。僕の頭の中に頼みごとがいくつか出来てきた。きちんと働いてもらえたらそれでいいよ」 「うーん、二人ともなんとなくかっこいい会話〜〜」ロリエーンはまさに目を輝かせる。 「クルアフ以上の長路となると思う。サーラ」 「はい、諸事の手配はお任せください」 「ああ、サーラだけは」「それ以上喋ると疲れるわよ。ロリエーンの評価だけは無効。いくさだというのに過度の仲良しごっこはよしましょうね」見る間に頭に血が上ったロリエーンを置いてきぼりにする。ピンクのエルフのわめき声より強力な響きが外に轟いたからである。 サーラは会議室の扉をゆっくり開ける。巨大樹の幹を半ば開いて作り上げたエルフのバルコニーへ向かった。夕暮れる中に先にたたずんでいたナーダを見つけた。外に出て響きの元の位置ははっきりした。 「森においてはあなたのお兄さんくらいね。きっちりした人」サーラは欄干に手をつく。エルフの手により枝を美しく細工したもの。 「厳しいわね、兄さん……」エルフの目は暗闇に負けないが、ランドドラゴンは逆である。エルフの乗り手がドラゴンに体を預け、ドラゴンがエルフに目を託す。その境地を目指して竜騎兵団はエサランバルの夜を駆けるのだ。 「他の兵への示しもつくんじゃないかしら?」森の美しい夜にさんざめいていたエルフたちが、現れた地竜に驚嘆して我先に高い樹々へ逃げ惑う。 「みんなの訓練になるかもしれないけどね……。サーラも大いに頼りになりそう」 「嫌味を言えるくらいならあなたも上等よ。ダムド将軍ともども弓隊長殿にも大いに期待しております」参謀は頭を下げた。 |
|