「コーモ!」「コーモ!」とノーラの懐に向かって仲間のゴブリンが騒ぎ立てた。 「コーモ君って言うのかあ。可愛いんだ」ノーラは懐のゴブリンを背中からぐっと抱きかかえる。ぐぐっと更に力を入れれば、ゴブリンの背丈がシャーズの少女に負ける。足が宙に浮いた。 「うわあ! 俺ぁ大人だ。馬鹿にすんな、シャーズ」 「じゃあ悲鳴なんかあげんな」ノーラは離さない。 「助けて! 頭からかぶりつかれる」 「失礼にゃゴブリン!」腕は疲れるが、ノーラはじりじり砂利を踏んで動き始めた。連れてこられた道がゴブリンの馬車で塞がれているのが現在の問題点である。 けして目を向けなかったが、ノーラのレイピア、そして大切な自転車の位置はしっかり把握している。 「卑怯なシャーズ女め! 人質なんて、正々堂々じゃねぇぞ」ノーラの抱きかかえたものがわめく。 「いーじゃんかこんくらい! 細かいとこ考えてなかっただけだよ。あんた態度でかいよ!」ノーラも近い顔めがけて大声を放った。 「じゃあ、おい! てめえら、賞品を人質にしろ!」コーモはシャーズの貴重そうな剣と乗り物を指した。 「そりゃ無いんじゃにゃい!?」 それから全員が動けなくなった。ノーラはただコーモの動きを封じることしか出来ず、ゴブリンたちも互いに口を利くのもはばかる様子。 ブルガンディの雲だけが潮風に流れてゆく。 均衡を破って、不意に動くゴブリンがいた。馬車に駆け寄る。ようやく車が道を開けるのでノーラは安堵した。 ゴブリンが馬車から引っ提げてきたのはストーンアックスである。ノーラの尻尾の毛が逆立って膨らんだ。(やりすぎた!) |
|