モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

2.キマールとノーラ



「子供というのは目を離した隙に大きくなるんだな。何度か会ったことがあるのに、ついお父さんと間違えたよ。わたしはキマールだよ」

 言われて、シャルンホルスト提督の令嬢ノーラは人懐こくも油断のならないシャーズの目を見開いた。しばし、じいっとキマールを見つめた。

「ごめんねえ、覚えてにゃい。あたいそんなちっさい頃に会ってたのかなあ。あと今朝、挨拶決める時に親父を見上げたと思ったんだけど」ノーラは自分の手足の寸を確かめた。半袖から伸びる腕、スパッツから長く伸びて地に降りた脚。

「ノーラ嬢は変わらないな」キマールは笑った。あごを包むひげの草むらが揺れる。「幼年生にしては大きいくらいさ。わたしの勘違いだ」

「万が一だってば。親父も何かといえば、でかくなったな、だかんね」面倒そうな顔を一度してからノーラも笑った。少女の笑顔の中にシャーズの鋭い牙が見えた。「あたい、級で一番後ろなんだよ。男子に混じって勝ち抜けるんだから。でも、ドワーフやオークに勝つようになっちゃうのもやだにゃあ」

「船で西へ渡ってみるかね。ちょうどケフル国にオークが攻め寄せているよ」

「ヒューマンも戦争やってんだってね。いや、ちょうど十八周年のあれだから向こうのチャンバラが当たり前なんだよね。今年はやたらに荒れたけどさ」

「そう。ノーラのお父さんはシャーズを見事に守ったね」キマールはノーラに対して話術を仕掛けはじめている。

 ノーラは不意に港の一角へ腕を伸ばした。「あそこの倉庫もすごかったよねえ。戒厳令に逆に刺激されてさ、ゴブリンの一党が立てこもってんの」半焼して骨組みを晒す建物。

「ほう」「あれ? 知んないの」「お父さんは無敵だね。カスズ海軍の英雄だ」

「でも親父、北から帰ってから元気ないんだ。様子がちっと変わった。あたい分かるよ」

「ほう、それは心配だね」キマールは待たせてある馬車のことを考えた。