モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

15.シャーズ走法



 一人対多数ではなく、一対一の戦いが沢山あるものとノーラは考えたい。ゴブリンの攻撃は一度だって食っていないのだ。士官学校の走り込みで鍛えた足を使えば、ゴブリンの愚連隊を切り分けられると思った。素手と素手の組手となれば、少女ノーラの大きめな体は一層輝く。

 思考を巡らすより早くノーラは走る。長い脚でゴブリンの間を駆けて、日射しにきらめく猫の瞳で彼らの隙を目ざとく見つける。

 ゴブリンの仲間から少し離れていると見るや襲いかかって、長い腕に力を込めて先手を取る。突き出した正拳に手応えが通じた。「よぉし!」

 痛烈な音を鳴らされて、倒れゆく同胞の姿を見せられたゴブリンたちも黙ってはいない。ノーラの背中めがけて殺到した。

 と彼らは鞭打たれる。閃いたのはシャーズの尻尾である。尻尾の打撃は強いものではない。撫でられた者たちもすぐ立ち上がったが、ノーラはあいも変わらず動いている。シャーズは尻尾の反動を使って駆け出す技法を心得ている。

 キマールが尻尾を巻いて遁走したおかげで闘技場が広くなったと、ノーラは考え始めた。自らの長い手足を全力で利用してゴブリンを一人ずつ狩り立ててゆく。肉食のモンスターになったつもりで。

 ゴブリンたちが背中合わせに集まってゆく。さすがに手の内を読まれたようだが、ノーラの快足は止まらない。

「飛び蹴りーっ!」いっぺんに蹴倒してやろうと意気込んだ。

 しかし、一人で勝手にへたり込んだ。「や、やっぱり限界だぁ!」息が切れた。少女の体力はまだまだ未完成である。止まれば汗の不快感が一度に身を包む。

 ゴブリン団は拍子抜けしつつ、動きを止めたシャーズを押さえに来た。「わっ。来るな、来るにゃ」

 しばらく揉み合いがあって、収まってみればノーラが一人のゴブリンを掴まえている。「どうしよ?」