モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

14.喧嘩は静かに丁寧に!



 残されたノーラは一身にゴブリンの笑い声を受け持つことになった。というよりも、相棒だったはずのキマールにとんずらされたからである。シャーズの薄情ぶり、せこさ、毎日アシャディ大金貨をかじって暮らす化け猫ども、とゴブリンたちの声は格段に大きくなった。笑われるノーラ。置き去りにされた世の理不尽を雨あられと注がれている。

「うっさい! うっさい! 今回はあたいが悪いんじゃにゃい!」

 実際に地団駄を踏んだので腰のレイピアもがちゃがちゃ不平を鳴らした。ノーラは気づいて自らの武器に手をやった。

 ゴブリンの一団はいっぺんに身じろぐ。血走った目でノーラを睨み付ける者もいる。

 分厚くて質の良いベルトごと、水兵ノーラはレイピアを外した。何の気なしに壁の隅へ歩き出した。ゴブリンも止めることを忘れた。

 再び何の気ないかのごとく、レイピア付きベルトをそこへ飾った。剣が下がったのはノーラの停めていた自転車である。そして自らの拳を打ち合わせた。皮手袋の小気味よい音がした。

「ね、堂々と喧嘩しようよね。これが賞品、あたいが自転車で帰れるか、あんたらちゃんがこれで帰れるかだよ」

 ゴブリンたちはその言葉をしっかり聞かずめいめい笑い声を立てた。

「そろそろ騒ぎなさんな、だよ。あたいも大声にゃ自信があるんだから。あちこちで皆ぴりぴりしてるご時世だ。シャーズの衛兵は駆けつけるのが早いだろ? 次がヒューマン」ノーラは両腕に拳闘の型を作った。

 本当にせこいやり口になったが、もうまともな勝ち目はないのである。刀を使えば逆に洒落にならない事態を迎えるであろう。

 馬車に積まれた大量のストーンアックスの姿は想像に難くない。

 さあ、どいつもこいつも分かってるはずだよ、とノーラは思った。