モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

11.ブルガンディ往来



「んー、速くて涼しいねえ。これって最高じゃない?」

「確かにわたしはひやひやしてるが、ノーラは痩せ我慢してないか?」キマールは帽子を抑える。

「全、然。いくらおっちゃんがでぶでも気にするこたないよ。ねえ、自転車最高って思うだろ?」ノーラはその自転車のペダルを踏んで壊れよとばかり激しい回転を何百回と加えている。まるで楽しげな仕事ぶりである。

 キマールは精一杯帽子を抑えた。ノーラの背中に風を避けても、二人の乗った自転車は小器用に転回する。上等な帽子はブルガンディの強い港風を四方から浴びた。

「本当に倒れないのか!?」ノーラはキマールのその声の調子に向かって、あははーと気楽な返事を返した。極細い車体は時たま、きい、きいと不吉な声を上げるのだ。

「どこへ拐おうと言うんだ? シャルンホルストの手先の娘」

「人聞き悪いにゃ。責任をもってお屋敷に送ったげてるんだってば」自転車は幾多の坂道を通ってゆく。ブルガンディの石作りの建物は貴重な土地を分け合いひしめく。

「わたしを振り向かなくていい。シャーズ街から離れようとするな。シーフのキマールが衰えたと思っているのか?」ボンベートの石を使った家々。シャーズの水兵娘が力強い足を使うたびに一瞬で後方へ飛び去って、また新しい景色を迎える。

「だあって、登り坂は疲れるんだもん。そんだけだよ」

「やっぱり無理をしていたんじゃないか」

「上手く行くっての。楽な道がちゃんと頭に収まってんだから」

「ならちゃんと説明してみなさい。注目ばかり浴びているぞ」キマールはブルガンディ島の様々な住人の視線を感じ取っている。住人の種類が最も気にかかる。

「あたいいつもこうして走ってんだから。周りの奴らだって大丈夫だよ。道順はいちいち説明しないよ。現役ブルガンディっ子の勘に任せときなってえの。おっとと」

 馬車で道が混んできたのでキマールは舌打ちした。「指図はやめる。せいぜい運転に集中してくれ」実に粗末な車たちが目に入ってきて、また舌打ちした。

「じゃあ集中して慎重にあいだを通らせてもらおうっと」「なるほどな」キマールは首を曲げて、細く小さな自転車の車体を顧みた。

 と、地面への視線の外からばらばらと、幾つもの足音が起こった。

 ノーラとキマールを囲う形になっていた馬車から多くのゴブリンが降りてきた。その短い体と足で大事なく器用に着地する。

「んー、これはなんかやばいにゃ」ノーラは言った。