モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

3.セテトの子は盗人



「んにゃ、あれは大人しくなったほうがちょうどいいやって分かった」

「お父さんがせっかく無事に帰ってきたのに不謹慎だねえ! いや、実は戦傷を負われていたのか? よもや?」

 不意にキマールの様子が変わったのでノーラは、「ごめんごめん。ちょ、ちょうど良くなってさ、しかも無事に帰ってきたお父さん大好きってとこかにゃ? あたい、正直な気持ちそう思ってんの。ほ、本当なんだから」「やはり体調不良説は無しか。やれやれ。英雄の子が言い訳を並べるのはよしなさい。まだ小さな子だな」

「いつも上官に絶対服従じゃきついよ。カスズ海軍の家の教育を受けたことのない者にはこんな気持ち分かんないんだから」ノーラは大袈裟にそっぽを向いた。

 その背中を追いかけるキマールの声は、「そうだね。おじさんはシーフのひよっこを叱る仕事をしている。軍隊教育なんかとは違うからね」

「げげっ。どっちも怖いおっちゃんか」ノーラは振り向かずに尻尾の毛を少し逆立てた。

「でもシーフと水兵を比べたらあたい自信あるよ。チャンバラ習ってるんだから」ノーラは腰のレイピアを叩いた。銀の鍍金はさすがに上質だとキマールは見立てた。「シーフは逃げるのが仕事なんだろぉ。あたいはがきんちょだけど、おっちゃんの格好で戦えるとも思えないね」ノーラは牙を見せて笑った。キマールは帽子にローブといった出で立ち。どちらもゆったりとして気候の変化によく対応する。金額をかけた代物である。

「うん、そうだね。わたしはもう若い頃のような仕事をしないで良い身分だ。あともう一つ言わせてもらうと、わざわざ相手を打ち倒さなくとも勝利する、それがシーフの極意さ」「うそぉ」

「盗んで、逃げる。これだけで完璧に勝っているだろ? 自分だけ金を払わず丸得だ。命まで奪わないから平和だ。これがセテト様の教え。ゾールの日の礼拝でいつも習うだろう」

「セテト様の日じゃないんだよねぇ。お説教で煙に巻こうとしないでさ、シーフに具体的にどんな技があんのさ」「やれやれ。じゃあ今から入学させてあげてもいいよ、お嬢さん」

「やだぁ」