モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

18.シーフの出先



「け、結局なにがどうなったからこうなってるんスか」言ったハッタタスはゴランの一瞥をくらう。

 ハッタタスは激しく首を振って、「あっしが犯人ならどの面下げて聞くはずがないでしょう! 勘弁して、本当」

「いやあ、聞きたいのは俺さ、ゴラン。この善良にまぬけに店番をずっと務めていた、この俺様に話してごらんよ」ペルタニウスはカウンターに肘をついて休んだ。ハッタタスは思わずそちらを振り返ったが、「その優しい先輩を見る目、いいねぇ」と指を差されたので顔をしかめた。結局ハッタタスは追い詰められているらしい。(なんであっしがこんな目に遭わされてんの!)

 ゴランが喋り始めた。「なにがどうなっているか、俺だってわからなかった。まさかすり替えられていたとはな」アルシャ袋の紐をつまんで持ち上げるのだった。


「ゴブリン街で背高のヒューマンがな、長い足でいくら荷物を守っていてもな、ゴブリンどもを舐めちゃあいけねえよ」ハーンは持ち物の酒瓶を手に取るが、その軽さに期待はずれな顔をした。

「ゴブリンの技をいただいて奴らより素早く決めちまったって言いたいのか? もう自慢はよそでやろうぜ。あと仕事もな。鍵をかけるから泥棒は出てけ。出ていくぜ」ペルタニウスは言葉を並べ立てると大きな鍵を手にした。

「仕事って」ハッタタスは店をさっさと閉めはじめたシーフを怪訝な顔をして眺める。

「よその店の妨害さ。休業するぶん余計に食わなきゃならねえ」

「おお。ペルタニウスのランチより確実にいいやな。狙うのは《ハサミガニ亭》だな?」ハーンは両手の人差し指と中指を開いて陽気な仕草を作った。

 ハッタタスは笑顔と揉み手を再び作り上げた。「おうハッタタス。これ以上嵌められないために諸先輩のご機嫌を取ってくれるのか」ペルタニウスの小狡そうな細面はいつの間にやら血色の良い笑みに満ちている。

「や、やっぱり?」ハッタタスは自分の財布の中身のことを考え始めた。ペルタニウスは店のギルドメンバー全員を《のら犬亭》の外に追いやり始めた。

 シーフの好きな金の音がした。ゴランは既にハーンとアルシャ袋を押し黙って交換し終えていた。まったくそっくりな二つの皮袋。「ほら、取れよ」ゴランは本来の報酬の中からアルシャ金貨をつまみあげた。