モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

4.捕物



「良い商人はツケを払って償いをするよ。それこそがシャーズのあきんどだ」

「自分で自分に気をつけろと言うのか。確かに夜中を騒がせて人目を引いたな」シャーズの騎士はヒューマンの老人の罪を心で勘定している。彼に不覚を取ったものの、丈夫でしなやかなシャーズの脚に力を入れればシャナクは静かに地面から立ち上がれる。正体不明の老人から少し距離を置いた。

「わしに不利なことでも伝えねばならぬ。それでなくては予言者として生きる価値もない」老人は神妙な顔をしたかと思えば笑い顔も作る。口の中に不揃いな歯がちらりと見えた。

 予言と聞いたシャナクの頬は歪んだ。「ふ、よし、聞いてやろう。まず杖を落とせ」

「うむ?」予言をいう老人は聞き返す。かえって杖を両手で握りしめた。杖が触って、老人の胸の宝石が闇に揺れた。

(不吉な)シャナクは闇の中に顔をしかめた。胸に提げられていたのは水晶のどくろであった。

「杖を地面に置いて、両手を上げておとなしくしろ」シャナクはフランベルジュを抜き放った。

 どくろはシャナクの目の前からいなくなった。老人が身をひるがえしたからだ。

「逃げるな!」

「逃げる! わしは逃げる運命にあるからじゃ!」


 慌てず、捕まえ、しょっぴいて手柄とする。逃げ惑うヒューマンの老人の背を追えば、猫族の若者の心に自信以上のものがあふれて躍った。彼らの狩猟の本能は興奮の中にこそ鋭さを見せる。

(良い犯人を見つけた)渦中のゴブリン街でヒューマンがシャーズに捕らえられる。それは様々な効果を生むに違いない。

「嫌じゃ! 嫌じゃ!」老人の背中はすぐそこにある。相変わらずけたたましく訳の分からない言葉を並べ立てている。シャナクはゴブリン街の石畳を次々踏みつつ、ブルガンディの評議会で本当に大きな顔をする自分の姿にまで想像を及ばせている。

 老人の次の行動はシャナクの想像にないものだった。単なる無駄であったから。

 老人は頭巾をかぶろうとした。(なんの意味がある)溶け込むべき人混みも、物陰さえない。先程から闇の二人が駆けるのは老人の走りやすい大通りだ。

(馬鹿だな)シャナクはため息をつく暇さえある。老人は背の頭巾をうまく取り出せないのだ。はっきり足がにぶった。

 シャーズの騎士は構えたフランベルジュの反対の手を突き伸ばす。老人の首根っこへ。ヒューマンへの最後のとどめを行うべく、一段と足を早めた。慎重を期して身体全てで老人を押さえ込むことにした。(衝撃によって怪我をさせるが、やむを得まい)

「あっ!!」頭巾ばかり見すぎていた。シャナクは自分の足を弾く強い衝撃に魂消た。シャーズの速度は地面へと捻じ曲がった。