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8.遂行



「おまえはヒューマンだ。だからこそ評議会の差し金なんだ!」シャーズの騎士はわめき散らしている。猫の瞳は、天空よりの奇襲の際に頭巾の中を見極めていた。

 予言をいう老人ではなかった。平たく四角い顔立ちに髭はなく、その堂々たる長身はドワーフではない。そのいかめしい体躯が構わず近づいてくるのでシャーズの騎士は悪い感触に怯えた。

 敵がダガーを振るってもシャナクはもう躱す術を知らない。

「あああっ! もしかしたら家の者の仕業か!?」シャナクは下から響くような悪熱にうめいた。腿を再び傷つけられた。

「ならゴブリンたちに雇われたか! あの貧乏人ども、いや、材料をおまえに譲ったのか? テイビルケの秘伝を盗もうとしたのが露見したのか」また傷つけられる。シャナクは闇の街並みに助けの来ぬ悲鳴を上げ続けた。

 素早さの対決であったのだから、足が傷ついた方が負ける。シャーズの騎士は戦いを既に諦めている。

「評議会、裁判所、どこでも構わん、何でも証言する! そうだ、おまえ、ヒューマンとして考えてみるんだ。西部で戦争をやらかしている真っ只中だ。私はおまえにいかようにも手柄を立てさせることができるぞ」いいようにいたぶられていても、シャーズの思考は止まりはしない。(猶予だ。浅くて異常な責めは猶予と考えてみるべきなのだ)

 そこで暗殺者は初めて喋った。「得があれば放ち、なければ殺すのか。俺の考えと少し違うな」


 仕事を終えて、暗殺者は息をついた。隣りで天から長く垂れているひもを引く。しっかりした作りの先端の鈎爪が一瞬にして落下し、夜のしじまに派手な音を響かせた。

 暗殺者は作業を始めた。まず鈎爪に食い込むゴブリン街の屋根の瓦をローブの奥へしまった。次に、地面に横たわるシャーズにその得物フランベルジュをしっかりと持たせてやる。そのうえ別のロープを取り出してはシャーズの手と剣の上にぐるぐると巻きつけた。それを終えると、そこまでの堂々とした作業が嘘のように駆け出した。足音は不自然に小さくなっていき、彼はそのまま闇へ溶けて消え去っていったかのようだ。

 そしてその後に、恐怖の夜を体験し終えたゴブリンたちが巣穴からようやく這い出し始める。


 朝。

 ヒューマンのゴランはゴブリンたちの異様な人だかりを見とがめた。