モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

16.寄り合い



「道端でしゃがみこんでひとの店の錠をいじくり回しやがって。いよいよ牢獄に引退したくなったか、じいさん」

「歳じゃあねえと言ってんだろう。衛兵の目からの守りの堅いご自慢の飲み屋じゃねえか、ペルタニウス」ハーンは酒に焼けてからりと乾いた陽気な声を上げた。ペルタニウスは「飲んでばかりいるんじゃねえぞ」と声に出そうとしてやめた。

「そうそう、奥まって誰も寄りつかないからシーフたちが寄り合える。《のら犬亭》最高っス」

「つまんねえぞ。客足はちゃんとあるんだよ」ペルタニウスは声を出してハッタタスにぶつけた。

「まぁ、きょう一日だけ店が保ってくれたらあとはどうなったって構わねえんだがな。危ない橋を飛び越えて来たのに飢え死にしておしまいになったらあまりに切ねぇよ」

「ハーンの旦那もお仕事でした?」

「いや、単なる腕試しのあとさ。わしも眠りたい」ハーンがあからさまに指差すのでハッタタスはひやりとしたが、差した先のゴランは未だに目を閉じていると思えた。

「わしが客になってやるからよぉ」ペルタニウスは口真似をしながら再び台所へ向かっている。頭の中では既にありあわせの材料を組み立てている。

「まったく気の利くいいお店だぜ。めしを食ったらすぐ寝ちまう。堪えられねえよな」ハーンはランチを待ち望んで適当な椅子を選んだ。

 椅子につくその瞬間にハーンの両肩に手を置いた者がいる。

「ハーンの話を聞いて安心したが、まだまだ困惑している。情けないな、俺は」

 ハーンの背後を取っていたのはゴランだった。

(つづく)