「やっぱり貰いに行くべきだったでしょ?」 「両替所がどこにある、馬鹿野郎」 ハッタタスとペルタニウスが言葉の投げっこをすればターバンと頭巾も踊る。 ゴランは《のら犬亭》のそこらじゅうの空席を一つ見た。 「ギルドの上に持ち込んでみたらいいでしょうが。上手くいったら支部長ものです。こんなひっそりしたお店、お釣りだけで買えちゃうっスから」 ハッタタスの額ははじかれた。「銀貨をもらったって蟹も食えねえのに」 彼が素早く文句を出している最中、頭から跳ね返ったダルト硬貨は再びペルタニウスの利き手に帰りついた。「ふん」 「後輩のお手軽な栄達の計画をねたむのは最悪と思うんスけど、ゴランの旦那のご意見は? ペルの旦那はシャーズの罠だってやけにうるさいから、その手前あっしは出かけられなかったんスよ」ゴランは酒場の椅子にその身を深く預けているところだ。 「我が身のためにギルド員に迷惑をかける。ギルド員の安眠を妨害する。こういう野郎は衛兵にやけにひっかけられるよなあ、ゴランのおっさん」 「脅し? 脅しっスか? なるべく自分を正しく見せる。さすがに技がお上手っスねぇ」 「俺はやましい技なんてなんにも知らねえ。俺の店を馬鹿にする野郎を許さねえだけ!」ペルタニウスは再び《コイン投げ》を行っている。ハッタタスは頭を下げた。 「あっ、ちぇっ」ペルタニウスは舌打ちした。ハッタタスの顔ほどに丸いターバン。銀貨の衝撃は吸い込まれた。 「あ、痛っ」頭を下げればハッタタスの血も下がり、銀貨を受けた最初の額の痛みはさらに食い込む。 「よし、ざまあみろ」「ダルトもらっとこ」「この野郎」「治療代」「ふん」 ゴランはといえば、黙念と目を閉じるだけであった。 |
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