モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

15.熟達



「おうい、追っ払ってくれねえか」《のら犬亭》準備中。主人のペルタニウス、それとハッタタスはカウンターで対して遊んでいたので、扉に近いのはゴランである。戸を叩く音は次々と重ねられて実にやかましい。

「眠れる時はしっかり眠るなぁ、このおっさん」背中を椅子にべったりと任せている者へ悪態を投げて、ペルタニウスはカウンターを飛び越えている。開店の準備に並べ立てた品々に足をかけるもったいない真似などしない。

「この人は無駄な振る舞いをしないのがご趣味なんスよ。お偉いっスよ。ああ、なにか合点がいきそう」ハッタタスは一人やりとりをした。

「あ。静かになりやがった」ペルタニウスは扉の向こうを見つめた。

 ハッタタスは静かに吹き出そうと努めた。ペルタニウスが扉の錠をつまんでいる。ガルテア王国製の、精巧かつ取り扱いの楽な回転錠である。《向こう側》はペルタニウスの指先をこつこつと叩く。

(うるせー)いまいましく思いながらも無言を保つ。《のら犬亭》の主人の敏感な指先は、音のせぬ激しいノックを繰り返すシーフの針金の感触を捉えてしっかり押さえつけていた。

 そこでペルタニウスは昼食を求める客を招いてやった。ひと息に開いた扉から一人のヒューマンが転がって入ってきた。

「てめえ、ギルド支部の錠を壊して一体どんな目に遭うつもりだ。じいさん」仰向けになっていた彼の胸ぐらを力一杯に持ち上げてやった。慌てて扉を閉める音をさせたのはハッタタスだ。

「まだそんな歳じゃねえよ」ごま塩の髪と髭は上下にぴんと伸びて元気がいい。ハーンは酒にまみれた赤ら顔を幸せそうに歪めた。