「グロールは悪い奴ではなさそうだな。ここを任せたい。おまえの部下を使って他のあさましい奴らの邪魔をしろ。とにかく中身に触れさせるな」並んだ荷はおびただしい数であったが囲めるだけの隊員はいると見えた。「俺の言うことを聞くんだよな?」 「ええ、はい。あなた様は親衛隊扱いされていますよ」とガルーフが先ほど腰に結わえ付けた命令書を指してきた。 「貴族なんざ守りたくもないが……集まった同胞は守ってやらんとな。だが取り締まりは力ずくで派手にやっていい」 「そろそろ飯どきですからね。せこい奴やら、いたずらな奴やら、たくさん来そうですよ」 「いつまで経ってもいくさにならないので戦士の皆さんは倦んでいるようです。居心地の悪い空気が漂っています」ジングが言う。 「詩人さんには気を逸らしてほしいところですが」 「ジングは俺の道案内だ」 「もちろん仰せのままに。それと戦勝の宴の用意をわたくしの仲間が進めておりますので」 「そっちの方を派手にやってほしいすけどね」 ガルーフは戦勝と聞き可笑しい。 「まあいまいちな部分はございますね」笑みをちょっと浮かべてジングはガルーフの先に立とうとする。 そこへグロールまで着いてくるのでガルーフは眉を大いにしかめた。 「初めに、あっしが良い人だから任せるみたいなことをおっしゃいましたが、軍隊はいちいち人定めするようなとこじゃないです。受けた命令は絶対にやるんです」 「言ったそばから嘘になってるぞ」グロールは一人持ち場を離れてガルーフたちにくっついている。 「いえいえ、ガルーフ様の命令を部下に再び振り分けてやっただけです。隊長の仕事です。荷に近づく奴をとにかくしばく。手順はごく簡単ですから」 「おまえに任せたのに持ち場を離れるのは単純におかしいだろうが。まずおまえを叩きのめしてやるよ」ガルーフは歩きながらサーベルに手を伸ばす。 「わっ待って。命令に対して意見も許されるんですよ。未知の場所に独りで行かれるのはだめです。二人以上で行動しないと。こちらの方は兵隊じゃありませんし」ジングはグロールに同意してのちガルーフにもうなずいてみせた。 「うむ……なるほど。俺はどうも至らないところが多いようだからな。二人とも知識を持つようだしそれぞれの分野が分かれているのも俺に得らしい。俺は文字も知らん」 「己の弱点こそ最も大事な知識と聞きますよ」ジングは手のリラをかき鳴らした。 「二人ともお調子者らしいのは気をつけておけよ」 |
|