しかし笑い合ったあともグロールは体験談をまくし立てた。海の向こうで使われる単語はガルーフには初めて聞くものばかりだった。しかし、とにかくブルガンディとかカスズとかいうような国がオークのヒューマン討伐行に影響を与えたらしい。海を隔てていてもとにかくそうだと聞こえた。 「ガーグレンの奴も楽に入城して体を休めても、頭は悩みに沈んでいると見える。何が起こっているか分からんらしい」 「ええ、あっしらもね」グロールは周囲を眺め渡す。闇にひっそりおとなしいヒューマンの並べたであろう品々。ガルーフもそれらをただ眺めた。 しばらく佇んだのち、そこに一人訪れた者がいる。グロールの部下に咎められたところを見てみるとさっきのジングだった。 「来るだろうと思っていたが遅かったな」とガルーフ。「さっさと健脚を発揮されて行ってしまわれたようでしたが、わたくしが入り用でしたでしょうか」とジングは気弱げに兵士の間を細い体を使ってすり抜けた。こちらの顔を覗いてくる。 (いいや)と一言ではね付けるつもりだったが、ガルーフは思いとどまる。 (友だったか同胞だったか)置かれた木箱や樽の蓋の裏の印。ヒューマンが文字をよく使う種族なら知識のない自分だけで事を進めるのは危険でしかなかろう。 詩人ジングは、口以外はおとなしい奴と見た。好きにさせようと生返事で済ませているとまた向こうから自動的に話しかけてくる。吟遊詩人の身の上で早駆けに挑んで息を切らせたままだというのに。 「置いてきぼりをいただきましてから、ガルーフ殿の行かれた方向を指差して語る方を何組か見ました。尋ねてみればヒューマンの秘宝が隠されていたとか。かのダイヤモンドをひとめ目に入れたく手掛かりを追って聞いて回りましたら、」詩人が一拍切った。 「別なところに辿りついておりました。地下です」 「ダンジョンか!?」 グロールも身を乗り出した。「なんで変な方向に行ってしまうんです。もしかして宝が別に」 「はい。氷室に置かれた品々がありました」 |
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