「うぐっ」ガルーフの口中に燃えさかる炎が入れられた。 牙持つ口をゲーリングの片手で固定されガルーフはオークの大きな鼻の上から自分の命運を見守るほかなく、不自然な姿勢と心持ちで了見違いをしたらしい。まさに日焼けするほど松明が近くとも神官は患者を焼かなかった。 「もう十分と思う」汗みどろの法衣の袖が松明を投げ捨てたらしい。炎は無造作に地面に転がされその影が砦の中に大きく踊った。ガルーフの顔もまた解放されており、若者は一歩下がって安堵の息を吸い始めた。 ガルーフは鼻とのどの違和感に驚く。ゲーリングは法衣をゆっくり正してから「のどが詰まるほどなら病気も焼けておろう。もう良いよ」と言った。 「御坊、それだけで保証があるのか」明らかにガーグレンには不満がある。 「というより保険じゃよ。灯りでこの子の中身も見ていた。しかし健康なオーク男子としてまったく変わりがない。おまじないにのどを焼いてやっただけ。ああ、バランへの祈りとは違うぞ」 「ごほ、なんで神官が医者の真似を、ごほ!」まるで吸う空気の色が変わったようだった。声を出すたびに邪魔が入るように思えたがそれでも聞きたい。 「神官を初めて見るかね? おまえさんは相当のいなかっぺじゃな」 |
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