モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

8.狼藉



 ガーグレンがこちらを指すとは思わなかった。

「まず此奴だ。此奴に罹患の疑いがある」

 詩人ジングと神官ゲーリングの視線がつっと動いてこちらを認める。将軍侍衛の士官も同じく、場のもの全員がガルーフの顔を認めた。不快感を受けるような眼差しだった。血の気の多いガルーフは反射的に叫び声を上げた。「おい!?」

「おい、なんだ、じじい。病気?」ゲーリングが一人だけ進み出ていた。そして神官自身の大口をしきりに指してくる。狩人時代にかかった医者は誰もかもとにかく口を診たものだった。

「一度も戦ってないんだぞ。体のどこが悪くなるんだ。奴隷みたいに連れ回されただけでは俺は何も変わらん」

「五月蠅い」そのガーグレンの声が最も大きく傍らの詩人が目を丸くした。

「貴様のご立派な癇の虫もそろそろ飽きた。今日が一番酷くなっている。軍を道連れに地底のゾールへ降伏するもりがなければ駄々をこねずにお医者に診てもらえ、大馬鹿」ガルーフは反駁しようと立派な腹に息を吸う。しかし、ガーグレンはその呼吸につけ入ったようでまた指差しを行なった。ガルーフの後ろに二人ほど士官が忍び寄っていたらしく、ガルーフの両腕はあっけなく押さえ込まれた。

「あっ、くそ、がが」本当に医師のすることと同じらしい。ゲーリングが口腔に圧舌子を突っ込んできた。舌に触れる不自然な平坦さ。冷たい金属の味。ガーグレンの新手の侮辱だと思った。

 ガルーフは自分の牙に気をつけて一息に頭を引いた。ゲーリングの手を口中から追い出すことに成功した。同時に後ろの士官の一人へ頭突きを与えることにも成功した。二人の士官がガルーフの手を放し怒りにまかせて剣を抜いた。「お…!」とガーグレンが怒鳴ろうとした。

「遠くで見ていろ!伝染るぞ」ガルーフは士官らに指を突きつける。「不治の病ならバランの火で俺を清めろ!」一気に自分の運命を決めてしまったが仕方がない。鼻を赤いもので染めた士官ひとりと慌ててみじろぎした大勢の姿でガルーフは満足することとした。医者のような神官はまた近づいてきた。