モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

15.人材の配置



 ガルーフは馴々しい腕を払いのける。すると相手の体ががら空きになる。そして喉に斬り込んでやる。言葉で警告したあとは見せしめを行う。

 サーベルを受け取った時に間合いは掴んでいた。相手は兜と胸当てと腰当てのみのいでたちで、オークの美意識と財をあわせて考えると中流の武者といえた。残りは無防備な肌で、のどの手前で剣を止められた彼は情けのない安堵と恐縮の息を長く吐くしかなかった。

 息をつき終わると、「隊長のグロールです! 横取りではなく具申の気持ちで近付いた次第です!」と必死な声を張り上げた。遠巻きの観衆の中からも隊長、隊長という動揺の声は多く聞こえた。ガルーフは剣を収めたがもう一度抜き放って刀身を眺めてみた。

「あっし、実は斬れてますか。お互い血は付いてないと思いますが」グロールはのどを気遣ったあとの自分の手のひらと士官のサーベルをよく確かめた。

「馬鹿。扱いやすさに驚いただけだ。軽くてこの握りもよく出来てる」ガルーフは剣の一部分を指差す。「おまえを許して話を続けると、ガーグレンに使者を遣わしたのはおまえなんだな?」

「将軍のことで? なんだかおかしな物言いの人です。あっしは直接将軍に話を通せるような者じゃないし、これらを見つけたのも別の士官殿の隊でしたよ」

 グロールはそびえる城門を見上げて指差し、「これ一枚向こうはヒューマンの国で、あっしらみたいのは本来近付けさせてもらえませんよ、こんなとこ。守りたくもなかったですけども、お偉そうな方に呼ばれて交代だとかおっしゃったので」

「雲隠れか。奴らは賢く軟弱で、おまえらは馬鹿で好奇心旺盛だったわけだ」

「またおかしな言い方を……。そう、素性は一言も聞かせてくれませんでして、嫌な予感はありました。あなた様のことは聞かせてくださるとありがたいです」

「そういえばそうか」ガルーフは笑って名を告げた。「言ってしまうと俺は平民でつまらん訳で旗持ちをやっているだけだ。グロールにも似た物を感じるが、隊長というからに結構な手柄があるんなら謝りたい」

「ガルーフ殿、本当に言葉遣いがよろしくないですね」グロールはやや柔和な顔をさらに楽しげに歪めた。「あっしだって平民ですからご心配無用です」

「牙も見えないし悪いが勇者にもほど遠く見えるな。訳が知りたいな」

隊長は答える。「牙が短いおかげですよ」