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6.風を巻いて



 左右の景色が激流のようにガルーフの後ろへ去ってゆく。あまり富むことのなかった狩人は馬の速さをしみじみ実感した。詩人の背に掴まって行く道はいま自分の足で駆けて来た道なのでありがたみは余計に身にしみた。

 詩人という職は旅の自衛術は身につけても当然武芸者ではない。夜道の疾走においてガルーフの命預けた背中は青白く頼りない印象を受けた。しかしジングはきびきびと馬を操った。しがみつくガルーフには彼の筋骨の動きがよく理解できた。馬上から一段下に見える歩兵たちの兜の列に次々追いつき追い越してゆく。

 落馬しないかガルーフにしては慎重な心を持った。顔だけ振り向けようとしたのだ。してみるとガルーフが世話を焼くことはなかった。やや老けた神官も馬とともにしっかりと離れずこちらの尻に食いついている。

 ガーグレンの書状を受けたとき一大事と輿からまさに飛び出してきたものだった。神官の顔はオークにしても頬がたるんでおり、中年以上の齢と見えた。しかし馬を用意させるよう素早く支持を飛ばし、その上に苦もなく跨がった姿には快活なものがあった。こちらへ追いつかんばかりな神官の駒のさらに後方の闇に瞳をこらせば、何騎かの士官が続いている。それぞれ馬の尻の左右に、自らの背に負う荷がある。回想すると輿は神官の乗り物の他にもう一つあったと思う。巨大な中身を分けて運んでいるらしい。それでも荷物は馬術の邪魔をして跳ね、木材のような音をよく立てる。

(バランを穢すなよ)それぞれの荷袋に厳かな紋様が施されていた。闇の行程はまだ続く。