モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

2.ヒューマンを見上げる



――バランの兵ついにヒューマンの喉元を狙う

「屈辱だよ。俺が心配損するなんてな」風を身に受けつつガルーフが言う。軍の左右に崖、そして目前には壁。吹き溜まりの底でオークの兵は風に揉まれる。

「平穏な旅には飽きた。敵などもう居ないさ、堂々城に入れ」

「狂うな若造。ヒューマンの巨大な壁が倒れてきてお前を取って食うぞ」ガーグレンは旗持ちに応えてからオークの陣に対面する砦を見上げた。

「哀れな決死隊だと思ったが、死にも可哀相にもならなかったな。見ろ、また飛び出た」沈黙の砦に対して宣告から何度か放った者どものことである。そしてオークの軍紀は乱れつつあった。

 ガルーフが旗ごと片手で指す先には味方の騎馬と歩兵の数名の背。砦の城壁に沿って左右にしばらく巡る。(そして怒鳴る)兵めいめいが牙ある大口を開けた。ありとあらゆる言葉を使ってオークの強さとヒューマンの弱さを砦の内部へ放り込む遊びである。

 ガーグレンが牙ある唇を歪めて唸り声を吐き出した。

「俺はさっき士気について進言申し上げたよな将軍。またぐずぐずになり始めたな」陣の中でもたるんだ笑顔が増えつつある。恐れながら陣をこしらえたものだが砦からの襲撃はついぞ無かった。

「後ろの隊もまるで無事、邪魔な奴らに追いつかれてここで詰まりを起こしても良くないという顔色をしているぜ。さあ決めろ。ヒューマンの煮炊きの煙が一筋も上がらないと報告されただろ」

「たわけめ」ガーグレンは牙をむいた。「あれはただの砦。城でも町でもない。市民といえば普段詰める見張りの家族か、貴重品を売りに歩く商人くらいなもの。いくさに際して軍人が控えさせただけだ。戦術の初歩も知らぬ奴」

「説教が長いぞ」吐き捨ててガルーフは空を仰ぐ。「薄暗くなってきたじゃないか。伏せ兵を恐ろしがる。それは夜空に矢を射かけられるのより楽か? 息を潜める卑怯で臆病なヒューマンども」それから地を指さす。「奴らが地面に伏せている間にその馬で踏み殺す、それくらいの意気を持て、将軍」