モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

14.戦利品



 木箱や樽など非常な数の物入れが大小とりどり集められていた。驚くべき光景だった。大勢の同胞がそれらを取り囲んでいたが、彼らの手によるものではないと聞いた。明らかに目立つもので、気を引かれて当然だと思った。

 その中の極僅かな数を開封したのはガーグレンの放った調査隊のわざであった。雑兵たちは少し見えた中身に非常な興味を示していた。

「勝手に取り分けるな」ガルーフは叫んで両手にガーグレンからの預かりものを振る。右にサーベル、左に命令書。同胞らは不平の鼻をぶうぶう鳴らした。

「馬鹿、危ないと言ってるんだ」ガルーフは命令書を丸く巻いてからヒューマンの残した謎を解く仕事にかかった。

 オークを砦に閉じ込めて殺す企みである可能性がもっとも高い。すでに南側の偵察は終わっており、近辺に目立つ生き物はいないことが分かっている。ヒューマンの兵ひとりどころかモンスターの影さえ見えないということだ。容器に詰められた食料品は彼らを呼ぶ餌ではないらしい。

 次に、貧しいオークを毒殺するつもりかと考えてみる。(俺だってあとから効く毒は知っている。ガーグレンはそれ以上に心得ているだろう)そのオークの知識ぶりそのものを小賢しいヒューマンが見下ろしていたら?(やるだけ無駄とわかるだろうな)自分のような者に毒見させて朝を迎えられるかどうか置いておけばいい。

 可能性が最も高いのはこれらが中くらいの毒を発すること。オークの口に入るのを待たず風に乗れるような毒。この置物たちは呪いの翳りを湛えているだろうか? 即死級の「高度な毒」があるなら砦に来させる前に使うはずだ、とガルーフは思う。ヒューマンが自分たちの住処に非常な毒を流すとは思えない。

 とはいえ、単純に考えても腐りものの起こす流行り病の恐ろしさがある。神官や医者に縁のなかった田舎住まいのガルーフには身に染みていることだった。

 ヒューマンの置き土産を目で確かめてみると、蓋の表や裏にそれぞれ何種類ばかりの短い模様があると思えた。

「《友》だとか《兄弟》とか、危なっかしいですよね」肉のたっぷりした指が横から伸びて蓋を示したのだ。