モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

13.神話



 最も奥の門にそれらは置き去られていたという。つまりヒューマンの領土――ケフル国――に通じる扉である。サーベルを腰に下げてガルーフは急ぐ。

 夜の闇の中に不意に見た顔が出てきたと思った。つい緩めた足音で向こうを振り向かせた。

「ああ先刻は!」ジングは声を張り上げてきた。「申し訳ありませんでした。考えてみれば将軍の拳をわざと引き受けてくださったというのに。将軍の怒りに相対して一介の詩吟屋がなんで立っていられましょう」弁解の言葉を投げてよこしながらも、走るガルーフにしっかりついてくるのだからたまらなかった。

「ガルーフ殿、やはりコボルトの痕跡が強いですよ。女神イリスの美しい姿があちこちで見られます。ヒューマンもなかなかどうして寛大でよかった。いや連勝を窮めるあまりの驕りでしょうか。その、秘宝のサファイアもこちらのものになれば無敵の軍が作れると愚考しておりまして」ただの与太話にしか聞こえずガルーフは閉口する。

(来るな)といっぺんに怒鳴るのはたやすい。しかしそれは吟遊詩人や周囲の兵たちを盛大に集めるに等しい。皆戦利品を求めてばらばらそぞろ歩いているのだ。先刻のガルーフと同じく彼らも腹を空かせるに違いなく、時間を待って彼らが軍の貧しい糧食で満足してくれるのを期待したほうが良いと思った。(走りながら)

 さりとてジングだけは元気についてくるが…と思った時には、足音がもう自分のものしかないのに狩人の若者は気付いた。

 疾走しつつ小器用に振り返ると後ろに流れるのは闇色の砦の建物だけだった。ガルーフは自分の健脚を笑った。