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11.ダグデル



「勉強ついでにポーションを試してみるかね? 田舎者の体には驚くほど効くかもしれん」ゲーリングは周りの者に告げて馬の荷物をほどきにやらせた。ガルーフもポーションは狩りに重宝したものだったが、単純に都に近いほど品が良くなるのを理解していた。まず焼けたのどが水分そのものを欲しがっていた。

「甘えさせるな。余計なものを与えるな」ガーグレンが怒声を放って横槍を入れた。

「左様で」ゲーリングはあっさり聞き入れ、「祭壇の方、いま立てさせるところでありましたが如何なさいましょうや」

 祭壇?とガルーフが見た先には馬たちからいくつも大きな物体が外され地に移されるところだった。馬上で見た包みはバランの紋様が施されていた。無学なガルーフにも中身の一層増した峻厳さは分かった。

 ガルーフがバランの祭壇というものに目を奪われ始めたそばで、ガーグレンはジングに横目で訪ねた。「この地は風の吹き溜まりか?」

「結論から申し上げると危険な地ではございません。はやり病の伝承はなく、平和な頃にわたしが往来した際も不穏な噂は耳に入りませなんだ。ああ、いえ、ヒューマンの怠惰と横柄が極まった頃です。そもそもこのダグデルの地は神聖皇帝発祥の頃からコボルトの領域でありました。そこへいつしかヒューマンが取って代ったのでございます。守るに有利な土地でありますから逆説的に争いが起きる。そして今オーク」ガーグレンが遮った。

「この吾輩に向かって何を説くか。だいたいアシャディのどこを取れば神聖というのか。市井の浮浪児が成り上がったにすぎん。そんな者を有り難がるヒューマンと貴様はぼうふらだ」真正面から怒声をくらったジングが畏縮する。

 将軍の癇癪を聞きつけて楽しげな顔をしたのはガルーフだった。「将軍様がえらい剣幕じゃないか。詩人のくせに言葉選びがどうも下手だな、おまえ」笑ってすぐガーグレンからの拳を食らった。

 場を抑えたのは一番年かさの神官だった。明るく笑ってやってから祭壇等の当面の方針について話を戻した。

 目立った行動は兵の不安をつのらせると判断し、よって現状を維持する。ガーグレンはそう決めた。祭壇の建立はなし。