機能性ディスペプシアに対する鍼灸治療
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)とは、胃内視鏡などの検査で明らかな器質的異常が見られないにもかかわらず、慢性的な胃の不調が続く疾患です。
近年では心身相関が強い消化管機能障害として注目されており、ストレスや自律神経の影響が深く関与すると考えられています。
FDの症状は大きく2つのタイプに分類されます。
1. 食後愁訴症候群(PDS)
・食後の胃もたれ
・少量でもすぐに満腹になる
・食後の膨満感
2. 心窩部痛症候群(EPS)
・みぞおちの痛み
・みぞおちの灼熱感
・空腹時やストレス時に悪化しやすい
これらは単独、または混在して現れることがあります。
機能性ディスペプシアの主な原因
1. 胃の運動機能異常
・胃の蠕動運動低下
・食後の胃適応性弛緩障害
2. 内臓知覚過敏
・わずかな刺激でも不快感や痛みを感じやすい
3. 自律神経の乱れ
・交感神経優位による胃血流・消化機能低下
・睡眠不足や過労
4. 精神的ストレス
・不安や緊張
・環境変化、人間関係のストレス
5. 生活習慣の影響
・不規則な食事
・スマートフォンやインターネットの長時間使用
・運動不足
東洋医学ではディスペプシアを「胃脘痛」「痞満」などの概念で捉え、以下の病態が関与すると考えます。
肝気鬱結:ストレスによる気の停滞
脾胃虚弱:消化吸収機能の低下
寒邪・湿邪の停滞(冷え・水分の摂りすぎ)
心脾両虚(現代医学で言う脳腸相関)
機能性ディスペプシアに対する鍼灸治療の目的
1. 胃腸運動の正常化
2. 内臓知覚過敏の緩和
3. 自律神経の調整
4. ストレス耐性の向上
鍼灸治療の内容
1. 胃腸機能を整える
中脘、上脘、天枢、足三里、内関への鍼やお灸で胃の運動促進と不快感を軽減させます。
2. 自律神経・ストレス調整
百会、神門、太衝、肝兪、脾兪への鍼やマッサージで交感神経の過緊張を緩和し、リラックス状態へ導く。
3. 冷え・虚弱体質への対応
関元、気海への温灸や三陰交のお灸で胃腸の血流改善と体力回復をサポートします。
機能性ディスペプシアは検査では異常が見つかりにくい一方、患者の生活の質を大きく低下させる疾患です。
鍼灸治療は胃腸機能と自律神経の両面にアプローチできるため、薬物療法と併用することで症状改善が期待できます。