起立性調節障害の症状
起立性調節障害とは起床時や立ち上がった時に、体や脳への血流調節がうまくいかず、血圧の低下や心拍数の上昇、目まい、吐き気などの症状がおこります。
特に10代前半から後半の思春期に発症する自律神経症状の一つです。
症状としては
・朝起きられない
・立ち眩みや目まい、吐き気
・動悸、息切れ、過剰な発汗
・倦怠感や疲労感、脱力感
・午前中に症状が強く、午後は元気になる
・食欲不振や下痢、腹痛など胃腸症状がある。
これらの症状はすべて自律神経の誤作動によるもので、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなると起こります。
大人では自律神経失調症の診断名が付くこともあります。
起立性調節障害の原因と治療
ストレスや気候、心身の急激な成長に伴うアンバランス、生活習慣などが要因と考えられていますが、いずれも自律神経に影響を及ぼすものであり自律神経の乱れが原因となっています。
治療として薬の服用のほか、運動や生活習慣、食生活の見直しなどがあります。
漢方薬を処方されることもあります。
東洋医学で考える起立性調節障害
陰陽の概念がある東洋医学では、「陽」は活動的なエネルギーで熱を産生し体の動きを活発にする働きがあり、「陰」は潤したり心身を安静に向かわせる働きがあります。
これはそのまま交感神経と副交感神経に当てはめることができ、交感神経は陽、副交感神経は陰と考えられます。

陰陽は常にバランスを取っており、どちらか一方が強くなったり弱くなったりするとバランスが崩れ疾病を発症します。
起立性調節障害は陰陽のバランスが崩れ、体の各臓腑に影響が及んだためにおこるので陰陽のどちらが弱くなっているのか、逆にどちらが強くなりすぎているのかを見極めることで治療が可能となります。
また五臓と呼ばれる人体の重要な五つの臓腑(内臓)は陰陽調整に重要な場所で、その中でも脾は気血生成の源と呼ばれるエネルギー生成の臓腑です。
脾が弱くなるとエネルギー不足となり強い倦怠感や精神的な疲労が出ます。
昇清作用と呼ばれる気血を上方向に昇らせる力が低下すると、貧血や立ちくらみなど「落ちる」症状があらわれます。
また脾は胃と並び飲食物を消化吸収する臓腑なので、脾が弱くなると吐き気、食欲不振、胃の不快感など胃腸症状が出てきます。
鍼灸治療
起立性調節障害の鍼灸治療は陰陽バランスを整え、脾の力を強めることが目的となります。
食欲不振や吐き気、下痢便秘など目立った症状が出ていなくても、実はサイレントで脾胃の機能が落ちていることはよくあります。
これは未病と言って、症状が出ていないけど本調子ではなく放っておくと発症する状態を言います。
そのため起立性調節障害の鍼灸治療では脾胃の治療を必ず行います。
お腹の神闕・関元と言ったツボにお灸をして脾陽を強めます。
また便秘気味の方には天枢、中脘などに鍼を打ち便通を良くします。

足は足三里、陰陵泉、豊隆などのツボに刺鍼をしたり、太白、公孫と言った胃腸のツボにお灸をおこないます。
お腹の治療で脾を強めつつ背骨に沿って走る督脈に鍼や吸い玉をして陽気の通り道を作り陽気を昇らせることで自律神経の調整をはかります。
大まかな流れはこのようなところですが、患者さんにより強く出ている症状や体質が異なるため、その他は症状に応じ治療内容が変化します。
アロマトリートメント(女性専用)
起立性調節障害は好発年齢が10~16歳くらいの思春期の子供に多いのが特徴です。
その年齢の子が鍼灸治療を受けるのは抵抗があるかもしませんし、いかに治療と言えど鍼灸がストレスになる場合もあります。
そのような方にはアロマトリートメントがおすすめです。
アロマトリートメントは治療寄りのリラクゼーションで、自律神経の走行に沿ってトリートメントすることで交感神経の興奮を抑え、副交感神経を優位にします。

使用する精油は漢方アロマと呼ばれる神気オイルで、漢方薬にも使用される生薬が配合されているため、体質(弁証)に合わせた精油を使用することで高い効果が期待できます。
漢方アロマトリートメントは便秘や食欲不振、胃もたれなどに効果があり、脾胃を強める手段としても優れています。
治療頻度と間隔
複数の症状が強く出ている場合は週2回の治療が必要となります。
症状がある程度治まってきたら週1回の治療を続けていきます。
症状により前後しますが、平均して4~6回ほどで症状に変化が出ることが多く、通院期間は2~3ヶ月ほどです。
部活や習い事など子供も忙しく、口には出さずともストレスとなっていることもあります。
「ストレスはある?」と聞いても「無いです」と言う子がほとんどですが、体は症状としてのSOSサインを出しています。
症状が出ている時は無理をせず休養したり、ストレスから遠ざけることが症状緩和への近道となります。