訪問緩和ケア鍼灸

緩和ケア鍼灸とは

緩和ケア鍼灸は、がんや慢性疾患の患者様に対して痛みや不快な症状を和らげ、
生活の質(QOL)を向上させることを目的とした鍼灸治療の一分野です。
西洋医学の治療と併用されることが多く、薬物療法だけではコントロールが難しい症状を軽減するために活用されます。

近年では鍼灸が病院の治療の一環としても取り入れられており、例えば国立がん研究センターの緩和医療科においてはターミナル期の患者様に対し、鍼灸師を含めた緩和ケアチームが編成され、身体症状(痛み、悪心、嘔吐、息苦しさなど)や精神症状の緩和を目的に用いられています。

また緩和ケアにおける鍼灸の有効性を示す研究が増えており、例えばがん患者の痛みや倦怠感、不安に対する改善効果が報告されており、一部の病院では統合医療として鍼灸を取り入れる動きが広がっています。

当院では中医学を基にした施術方法で胃腸疾患、メンタルの不調、自律神経の調整、過呼吸などを得意としており、来院することが難しい方のために訪問鍼灸もおこなっております。

緩和ケア鍼灸は身体的・精神的な苦痛を和らげ患者様の生活の質を向上させる重要な治療法で、西洋医学と組み合わせることでより効果的なケアが提供でき、ペインコントロールや慢性疾患の管理においても鍼灸施術が一助になると考えております。

緩和ケア鍼灸の目的

①QOLの向上
QOLとは「生活の質」のことで「日常生活をどれくらい快適に過ごせているか」とも言えます。
慢性的な体の痛みや薬の副作用、イライラや不安感、眠れないなどの症状は日常生活において大きなストレスとなります。

鍼灸でがんやその他の原疾患を治すことは難しいですが、周辺症状を寛解させ快適に日々を暮らせるようにするのが緩和ケア鍼灸の大目標となります。

②痛みの緩和
体の痛みの原因は様々で、疾患そのものによる痛み、長期臥床など同じ姿勢が長期に続くための痛み、むくみや血行不良による痛み、筋肉の緊張による痛みなどがあります。
長期臥床では褥瘡(床ずれ)の原因にもなり、血行不良やむくみも同時に出現します。

疾患による痛みは鎮痛薬などで抑えることができますが、むくみや筋肉の張りによる痛みは鎮痛剤が効かなかったり、それ以上の痛み止めを処方できないこともあります。
鍼灸を併用することで、鎮痛剤単独よりも鎮痛効果が期待できると言う研究結果も出ており、鍼灸が痛みの緩和に役立ちます。

③メンタルの安定
ホルモン剤や抗がん剤治療中や治療後は、怒りっぽくなったり、急に泣き出すなど薬の副作用により情緒が不安定になることがあります。
鍼灸でイライラ、不安、不眠など精神的に不安定な状態を安定させる効果が期待できます。


緩和ケア鍼灸のメリット

①副作用が少ない
副作用がほとんどなく、細い鍼灸針を使用するため侵害刺激が少ない療法です。

②西洋医学との併用が可能
厚労省のeJIMでは「鍼灸はがん性疼痛に薬物療法以上の効果は無いが、併用することで薬物療法単独より優れるのではないか」と明記されています。
また、がんに対して役立つ補完療法として鍼灸が挙げられています。

③薬物療法の補助
がん性疼痛(突出痛)などに対して薬剤の鎮痛効果の補助が期待でき、NRS10の痛みが薬剤で4~3まで下げられたとして、鍼鎮痛を行うことで1~2まで下がることがあります。鍼灸の鎮痛効果は薬剤ほどはありませんが、その補助として効果が期待されています。

 

緩和ケアにおいて鍼灸は何ができるか

鍼灸は東洋医学の療法で西洋医学とは歴史的経緯や概念が全く異なります。
そのため科学的に鍼灸を解明しようとしても難しいところがあり、理解しにくい部分もありますが西洋医学とは異なる考え方で人体に対して有用な影響を与える療法です。
鍼灸が緩和ケアにおいてどのような役割を果たせるのか、東洋医学の視点からお伝えします。

 

①疼痛緩和
長時間または長期間の臥床(寝ている状態)が続くことでおこる血行不良や筋肉が硬くなり肩こり、腰痛、背中の痛みなどを軽減します。血行を改善することで褥瘡(床ずれ)防止にもなります。

痛みは「不通則痛」と言われており気や血の巡りが「滞る」「詰まる」ことにより発生すると考えられています。
鍼刺激で経絡を開き、気血を通すことで痛みの緩和を図ります。
強い痛みには四関穴と言う、足の甲にある「太衝穴」と手の甲にある「合谷穴」を結び刺激を入れることで鎮痛作用が生じます。

中国の「鍼麻酔」はこの四関穴を利用した鎮痛方法です。

 

 

②便秘
器質性便秘は鍼灸の適応対象外ですが機能性便秘に用いられ弛緩性便秘、直腸性便秘、腸燥便秘などが対象となります。

東洋医学では気秘、虚秘、冷秘、熱秘の4つに分類され気秘は気の詰まりによるもので直腸性便秘、、虚秘は気虚(エネルギー不足)による弛緩性便秘に相当します。
冷秘、熱秘は冷えや熱による便秘で腸燥便秘になります。

通便の鍼ではおへそ周囲の「天枢穴」「大巨穴」足の「上巨虚穴」「豊隆穴」などを使用します。

 

 

③消化器症状(悪心嘔吐、食欲不振)
悪心・嘔吐は気が上部消化管付近でうっ滞、逆流することでおこると考えられています。
通常は口から胃へと下方向へ向かう気の流れが逆流するため嚥下にも支障をきたします。
全身と併せて腹部の気の流れを通す施術となります。
食欲不振も悪心嘔吐に伴い出現したり胃腸の動きが悪くお腹が空かない、膨満感などであらわれるので、鍼施術はほぼ同様のものとなります。

足の甲の「太衝穴」と手首内側の「内関穴」、みぞおちの「中脘穴」、足のすねにある「足三里穴」などを使い、全身の気を流し胃腸の活力を入れる健脾・和胃と言う治療法を取ります。

 

 

④不眠・精神不安・気持ちのつらさ
痛みで眠れない時は除痛が最優先となりますが、心配事や不安などで眠れない時は「寧心・安神法」を用います。
東洋医学で「心神」とは精神のことで脳は「心」のカテゴリに分類されます。
心神が安定しないと精神不安や緊張、睡眠へ影響が出ます。
心を安寧にして神を安定させるのが寧心安神法です。

手首にある「神門穴」、眉間の「印堂穴」、頭頂部の「百会穴」などを使用します。

 

⑤息苦しさ
呼吸は気の巡りが乱れたり、気を体内に納める「腎の納気作用」の低下により起こると考えらています。
呼吸が浅く速い、息苦しい感じがする場合は「疏肝理気法」を用います。

足の甲にある「太衝穴」と手首内側の「内関穴」を使用し気の巡りを整えます。

息が充分に吸えない感じする息苦しさは、腎の納気作用を強めるため補腎を行います。
足首内側の「太谿穴」「復溜穴」背中の「腎兪穴」などを使い腎気を補います。

 

 

⑥倦怠感、疲労感
倦怠感は気血津液の巡りが悪くなり起こったり、エネルギーである気が不足していると感じやすくなります。
胃腸の機能が低下し、便秘や食欲不振などで飲食が充分に摂取出来ないと気虚から倦怠感があらわれます。

倦怠感に対しては気を補う「補気」、血を補う「養血」、脾胃を鼓舞する(胃腸の機能を上げる)健脾益気法を用います。

手の甲にある「合谷穴」おへその下にある「気海穴」、脚にある「足三里穴」などを使用します。

 

⑦むくみ(下肢浮腫)
長期臥床や活動時間が減ると、下肢や全身にむくみが生じます。
むくみは痰湿や痰濁と呼ばれ、排泄されない余分な水分を指します。
脾胃は痰湿を捌く場所と言われ、胃腸の機能が低下するとむくみやすくなります。
「健脾去湿法」で胃腸を強め痰湿を取り除きます。

胃腸に対しては足の「足三里穴」や「陰陵泉穴」を使い、むくみに対しては物理的に流すのも効果的なので下肢や背中など全体のマッサージをおこないます。

 

 

訪問緩和ケア鍼灸導入までの流れ

①ページ下部の問い合わせフォーム、またはお電話で当院にご連絡ください。
 症状をお聞きし、訪問日の調整を行います。
 症状や施術内容、施術時間や料金などご不明点もお気軽にご相談ください。

②かかりつけの医師、担当のケアマネ―ジャーにも訪問鍼灸を検討していることをご相談ください。
健康保険利用には医師の同意書が必要となるため、かかりつけ医師との連携が重要となり同意書発行をお願いする必要があります。
同意書は当院に用意しております。
(自費で訪問鍼灸施術を受ける場合は同意書は不要です)

③初回無料カウンセリングで訪問いたします。
 日時調整をして症状や体調の確認、同意書お渡しのためご自宅へ伺います。
 問診等のカウンセリングは30~40分ほどを見込んでいます。
 ※初回カウンセリングは無料です。施術は行いません。

④医師の同意書が発行されたら、健康保険による訪問施術が可能となります。
 ※医師の同意書が発行されるまでの施術は自費となるのでご注意ください。

 

医師の同意書が発行されない場合は健康保険が適用されません。
後期高齢者医療保険以外の保険証の場合、保険適用とならない場合があります。
詳しくは当院ホームページの「健康保険利用」をご覧ください。

 

訪問鍼灸エリア(2025年4月現在)

当院からおよそ4kmまでの範囲。

葛飾区全域
江戸川区(西小岩・南小岩・新小岩)
足立区(中川)

訪問エリア外の方はご相談ください。

病院、介護施設への訪問も施設の許可があれば可能です。

 

訪問日・時間

訪問日:月曜日または金曜日

時間は10時~17時までの間で調整いたします。
他の訪問がある場合、ご希望のお時間が取れない場合がありますのでご了承ください。


料金・施術時間

〇緩和ケア鍼灸施術  40分

  1割負担 3割負担 自費
初診料 3,700円 4,900円 7,500円
2回目以降 3,500円 4,300円 7,500円
延長10分 1,000円 1,000円 1,500円

全て往療料込。

施術時間は約40分ですが、症状や体力により変動します。

当院の訪問鍼灸料金は他院に比べやや高めです。
緩和ケア鍼灸は特殊な技術であり、施術時間をしっかり確保する必要があります。
また緩和ケア鍼灸を受けられる方は体力の低下や薬の副作用などで体調や症状がその日により大きく変わることもあり、施術前の問診等を詳細に行う必要があります。
健康保険範囲内の時間では施術効果が出る前に終わってしまうため、保険適用+延長と言う形で施術を行い、料金も保険適用の料金+延長分(自費)となります。

 

〇通常鍼灸施術   60分

  1割負担 3割負担 自費
初診料 7,100円 8,300円 10,500円
1回 6,800円 7,600円 10,500円
延長10分 1,000円 1,000円 1,500円

全て往療料込。

施術時間は60分となります。
健康保険適用には条件があります。詳しくは「健康保険利用」のページをご覧ください。

訪問鍼灸施術のお会計は現金、クレジットカードがご利用いただけます。

 

医療・介護関係の方へ

緩和ケア鍼灸はまだ一般的では無く、全国的にも鍼灸受療率は5%程と鍼灸施術を受けたことがある方が少ないのが実状です。

鍼灸の効果、何ができて、どうやるのか。また本当に効果があるのかなど懐疑的な部分もあると思いますが、それらを払拭し鍼灸の役割をお伝えするのも私たち鍼灸師の役目と思っております。
ご不明点があれば、お気軽にご連絡ください。

鍼灸施術を行うにあたり、事前に医師、看護師、ケアマネージャーなど関係職種に鍼灸施術内容を記載した鍼灸施術計画書をお送りし、ご確認いただいた上で施術を開始します。
同様に毎月ごとに施術報告書と翌月の施術計画をお送りし、各職種間との連携を緊密にするよう努めて参ります。

上記の症状に該当する患者様、ご利用者様がいらっしゃいましたら、下記フォームよりご紹介いただければと思います。


 

お問い合わせ

当院LINE、お問い合わせフォームからご連絡ください。
施術中は電話に出れないので、電話の方は留守電にご用件をお話しください。
折り返しお電話いたします。

 

訪問緩和ケア鍼灸への問い合わせは下記事項をご記入ください。

①主訴(最もつらい症状)
②疾患名・診断名
③既往(いつから症状がでているか)
④施術をご希望の場合は初回訪問の希望日(訪問は毎週金曜のみです)
⑤住所、電話番号、患者様の年齢、鍼灸施術経験の有無

施術内容の相談、説明のみでもお気軽ご連絡ください。

 

 

03-3659-9788  担当:賀村(カムラ)