突発性難聴

突発性難聴の症状と原因

突発性難聴は、ある日突然片方の耳(ごくまれに両耳)の聞こえが悪くなる病気です。
突然発症した感音難聴(音をうまく感じ取れない難聴)のうち、原因がはっきりしないものを突発性難聴と呼んでいます。

突発性難聴の発作は一度きりで、繰り返すことはほとんどありません。
難聴以外に、耳鳴りや耳がふさがったような耳閉感、めまいなどの症状をともなうこともあります。

 

原因はよくわかっていませんが睡眠不足、疲労、多量の飲酒、血流障害やウイルス感染による炎症、ストレスも関係しているのではないかと考えられています。

1.ウイルス感染:ムンプスウィルスの感染と考える説。
2.循環障害:内耳の循環や血流が悪化したためにおこるという説。
3.ストレス:ストレスにより血管が収縮して内耳の血流不足がおこるとする説。

このように、いずれの説もはっきりした原因として医学的に証明できていません。

 

突発性難聴の治療と予後

一般的にはステロイド薬の内服や点滴、注射の他、ビタミン剤、血流改善薬の処方がおこなわれます。
それ以外に高圧酸素療法やレーザー治療を行う場合もあります。

突発性難聴は完全に治癒するものが3分の1、改善はするが元の聴力までは戻らないのが3分の1、全く治らないものが3分の1と言われています。

また治療は早ければ早いほどよく、突発性難聴になったらすぐに耳鼻科を受診し治療しないといけません。

 

東洋医学で考える突発性難聴

難聴は耳聾(じろう)と呼ばれ、耳鳴と合わせて発症します。
何らかの原因で耳を取り囲む経絡が閉塞したり、耳を栄養出来なくなることで耳の機能が低下して聴力が減退します。

 

耳の経絡が閉塞する原因
1.風熱邪の侵襲
2.肝鬱化火、肝火上炎
3.痰火上擾
4.痰湿阻滞
5.腎虚
6.脾胃虚弱

1.風熱邪が耳の経絡に留まることで耳聾がおこります。風熱邪はカゼのことで、ウイルス説の突発性難聴がこれに相当します。

2.3.肝鬱化火・肝火上炎、痰火上擾はストレスなどガマンの限界を超えたとき、圧縮された気が熱を持ち頭の方へ上がることを言います。
その際に熱が経絡を焼き耳聾、耳鳴が発生したり、圧縮された気が経絡を詰まらせることで聴力に影響が起こります。

4.痰湿阻滞は胃腸の働きが低下し水分代謝が悪くなることで体の中に余分な水分が過剰に溜まり、耳の経絡や耳の穴(耳竅)を詰まらせることで発症します。
これは循環障害説に相当します。
飲酒は痰湿を溜めるため、多量の飲酒が難聴に関係するのはこのためです。

5.腎虚難聴はいわゆる老人性難聴で、耳を栄養出来なくなり起こる難聴です。

6.脾胃虚弱とは胃腸虚弱のことで、胃腸の働きが低下するとエネルギー源となる気血がうまく生成できなくなり、耳を栄養出来なくなり耳の機能が低下するものです。
疲労や睡眠不足は脾胃の働きが低下することによりおこります。

このように原因不明の突発性難聴ですが、東洋医学では経絡の阻滞や臓腑の機能低下により耳が栄養されなくなったことにより起こるものとして考えます。

 

鍼灸治療

突発性難聴の鍼灸治療は経絡を通すことを目的とします。
耳に関係する経絡は耳の周囲を取り囲んでいるものや耳の穴に入っていくものなど複数あります。
その経絡上にあるツボに鍼を打ち、経絡の阻滞をスムーズにします。

 

また痰湿阻滞型の難聴ではむくみを取るため首や肩に鍼を打ち、背中に吸い玉をするなどして全身の血流を改善させます。
冬場に雨風に当たった後に突発性難聴となった場合は、耳にお灸をし寒湿邪を取り除きます。

耳鳴や目まいなどの治療も同時に行いますが、先に耳鳴や目まいなどの周辺症状が取れることが多い傾向にあります。

 

治療頻度と通院間隔

突発性難聴の鍼灸治療もスタートは早ければ早いほど良いです。
耳鼻科の治療に行ったその日にご来院される方もいらっしゃいます。

突発性難聴は3ヶ月経過した時点で症状固定となり、それ以降は聴力の回復は見込めなくなるので、そこまでの短期集中治療が必要となります。

最初は週2回で通っていただき、様子を見ながら4~6回目以降は週1回ほどのペースで鍼灸治療を受けていただくのが理想的です。

病院でステロイド注射や高圧酸素療法などの治療を受けている期間も鍼灸治療は可能です。同時並行で治療を行いましょう。