お灸と入浴の違い
12月に入り、急に寒さが厳しくなってきました。
これから1月、2月は本格的な冬の寒さとなるので、冷え性の人にはつらい時期かもしれません。
冷え対策にはしっかり着込んで保温するのが大事ですが、着込んでも寒い。体の芯から冷える感じがする。足先の冷えがひどくて眠れない。足先がジンジンするなど強い冷え症状は出ていませんか?
また冷えにより肩こり、腰痛、胃痛、下痢、強い生理痛、不妊症など、血行不良によるつらい症状もあらわれます。
冷え性の体質改善のために当院では温活コースをお勧めしていますが
「お灸で温めるのは分かるけど、それならお風呂で温まるのも同じじゃない?」
「こたつの中で足を温めていればいいんじゃない?」
そのような疑問を持たれたことはありませんか?
今回は体を温める方法として、お灸と入浴の違いをお話しします。
まずお灸の説明ですが、当院で使用するお灸は2種類あり、一つは台座灸と言って紙製の台座の上にもぐさが載っておりそれに点火するタイプです。これはツボをピンポイントで温めるのに適しており、熱さが強めなのが特徴です。

もう一つは温灸で網の上にもぐさをのせ、その空間の熱で温めるタイプです。こちらは広い範囲を温めるのに適しており、おへそなど直接お灸ができない場所を温めることができます。

お灸と入浴の違い
①循環器系への負担
お灸は局所を温めることができるのに対し、入浴すると全身が温まります。全身が温まれば血行も改善しますが、血圧が上がりのぼせやすい人は長湯できません。
お風呂やサウナが苦手と言う方は意外と多く、のぼせたり気分が悪くなることがあるという方もいらっしゃいます。
そのような方には長時間の入浴や半身浴はお勧めできません。
お灸も大量に長時間やれば「灸あたり」と言ってのぼせや目まいなどのぼせ症状がでますが、少しずつ温めて行けば灸あたりは防げますし循環器系の疾患を持っている方にも施術可能です。
②気随液脱(きずいえきだつ)
お風呂に入れば血行がよくなり汗が出ます。汗が出ればスッキリすることも多いのですが、虚証体質の方は風呂から上がるとだるくなったり疲労がどっと出たりします。
これは発汗と共に気が一緒に体外へ出てしまう「気随液脱」の状態です。
汗は津液の変化したもので、津液とは体の中の正常な水分の総称です。
津液は気と共に体内を巡るため、発汗により津液が体外へ出ると気も一緒に出て行ってしまい疲労感や倦怠感が出ることがあるのです。
お灸は熱を加える範囲が狭いため、お灸で発汗することはあまりありません(個人差はあります)。
③ピンポイントでの作用
お灸は台座灸、温灸共に温めるのは局所的です。またお灸はツボに据えますが、これは特定のツボや経絡を温める目的で行います。
経絡やツボも性質があり、温めて良いところ、温めない方が良いところがあります。
お風呂やこたつでは全ての経絡が温まるため、温めない方が良い経絡まで温まり、のぼせやイライラ、めまい、頭痛の原因となり得ます。
お灸で狙ったツボのみ温めることができれば、のぼせ体質だけどお腹が冷えている、冷えの生理痛、不妊症と言った方にも対応ができます。
これはお灸の大きな特徴です。
④白血球数の増加
これは西洋医学的な研究結果ですが、お灸で故意にやけど状態を作ることでその部位を修復するために白血球が増加したと言う研究結果があります。
白血球は免疫に重要な役割があり、お灸をやることで免疫力が強まり風邪を引きにくい体質になります。

このようにお灸と入浴では温めると言う目的は同じでも、その中身が大きく異なります。
お風呂をディスっている訳ではなく、あくまでお灸との比較をしただけで入浴も健康や心身のリラックスにはとても大切です。
お灸にもデメリットはあり、火傷や灸あたり(のぼせ、めまい、頭痛、吐き気)などリスクは伴いますが患者様の体質を見極めてうまく使いこなすのが鍼灸師の腕になります。
お灸は鍼と共に数百年以上の歴史ある、とても優れた治療法です。
のぼせ体質だけど冷えがある、いわゆる「冷えのぼせ」体質の方におすすめです。
体質改善をやってみようかな、と思われたらぜひ温活コースを試してみてくださいね。