これまでの10年、これからの10年

2025年10月14日でオリエントエクスプレスは開院10周年を迎えました。

これも多くの方の支えがあったからで、改めて御礼申し上げます。

 

2015年10月14日、鍼灸院オリエントエクスプレスは開業しました。
開業を決めたのは約3ヶ月前の6月ごろ。

急遽決めた開業だったので物件探しや備品購入、内装業者探しなどいろいろ大変でしたが意外とスムーズに事が運び、鉄道の日の10月14日に開業できました。
これも大家さん、不動産屋さん、業者さんのおかげだったと思います。

とは言えストリートビューを見ると分かりますが、当初はウィンドウサインを発注する資金も無く、手作り看板に内装はカーテンで仕切っただけの空間にベッド1台の状態でスタート。
人脈も事前告知もホームページも無い、あるのはワードで自作したチラシ(しかもあまりにひどい出来の物)だけ。

そんな状況では患者様が来るはずもなく、最初は集客も経営も大変苦労しました。
他の鍼灸院さんのブログなどを見ていると「開業6ヶ月でカルテが300枚を超えた」と書いてありますが、振り返るとうちの開業6ヶ月後のカルテ枚数は54枚。新規の患者様が0の月もありました。

これはまずいと思いチラシを2万枚印刷し、全て手配りしました。
お金はないけど時間はあったので、葛飾区内の地図を印刷し番地ごとに配ったエリアを色を塗っていき5ヶ月かけて高砂・柴又・鎌倉・金町・青戸・亀有・奥戸・細田・小岩地区に2万枚配りきりました。
チラシを見た人にその場で捨てられたこともありましたが、タワマンの管理人さんにお願いしたらエントランスに置いておくと言っていただき、10枚ほどもらってくれたこともありました。
その数週間後、タワマンの方が来院してくれた時は嬉しかったです。

いろいろなことも試しました。

セブンカルチャーで東洋医学・薬膳セミナーを開催する機会をいただき、3ヶ月間講座をおこなったり、近隣の自動車教習所に出張施術にも行ったりイベントコラボもしました。

いずれもコロナ禍で途切れてしまいましたが、自院を知ってもらうためにとにかく良いと思ったことはすぐ実践していきました。

この10年の間に世界で起こった大きな出来事の一つがコロナです。
営業自粛要請やソーシャルディスタンス、外出や地域を超えての移動制限などありました。
さすがにこの時は世界も自身の店もどうなるのか検討がつきませんでした。

しかしその中でも当院を頼って来てくださったり、お客様からマスクを差し入れしていただりと、多くの方に助けられコロナ禍を乗り越えることができました。

心から感謝申し上げます。

 

もう一つ当院での大きな出来事が、院内改装でした。

鍼灸施術だけではなくリラクゼーションニーズにも応えたいと考え、妻に相談しアロマトリートメントの技術・資格を取得してもらい、完全個室の漢方アロマトリートメントをスタートしました。

鍼灸施術と漢方アロマ。全く違う施術方法ですが東洋医学の理論、養生法で体質改善や症状の寛解を目指し、鍼灸治療一択だった当院に新たな選択肢ができました。
漢方アロマはスタートから2年半ですが多くのお客様に好評をいただいており、これからも鍼灸同様、技術の研鑽を積んでまいります。

 

開業当初はまずは3年がんばろうと思ってスタートしましたが、10年続くかどうかは分かりませんでしたし10年後を想像できませんでした。
今、10年を迎えて安泰ではありませんが、これからも鍼灸院を続けていこうと言う強い思いはあります。

これからの10年をどう過ごすか、どのようなビジョンを持つか。
それは鍼灸の発展のため自分の経験を次世代につなぐことではないかと思うに至りました。

鍼灸業界を盛り上げるために、多くの先生方が美容鍼やスポーツ大会などでの出張施術、一般向けの鍼灸セミナーなどを開いて東洋医学・鍼灸を広めようとしてくださっています。

私は自分自身が講師やインフルエンサーに向いていないことは承知しており、そのような形で鍼灸の認知向上にはお役に立てないでしょう。

鍼灸の効果や良さがより広く知れ渡るためには鍼灸施術の研究と論文などでの科学的根拠が必要だと考えています。
数値や画像診断にあらわれない気血津液、経絡などを科学的に証明する手段は現在はありませんが、多くの症例を集めることで信頼できるデータにはなるのでは無いかと思います。

心理学や精神医学なども数値化、可視化はできませんが学問や医学として確立されており、統計学や確率論同様に鍼灸も母数が多ければデータやエビデンスとして有効になるのではないかと思います。(東洋医学は経験医学であり、すでにそのような形でのエビデンスは確立されています)

鍼灸資格を取得してから約20年。
世の中には腕や知識、臨床経験が私より格段に上の先生方が大勢います。
しかし自分も鍼灸師の端くれとしてやってきた経験や知識、技術があり、それを鍼灸の発展のために役立てたいと思っています。

それが私を信頼してご来院いただいた患者様へのご恩返しにもなると確信しています。

ここまでは自分の院のために頑張ってきましたが、これからの10年は東洋医学・鍼灸業界のため、まだ鍼灸を経験したことのない方やこれから鍼灸師を志す方のためになる仕事をしていきたいと考えています。

 

まだまだ未熟ですが…と謙遜して書きたいところですが、さすがに20年もやってて自称未熟は嫌味だし、私を信頼していただいている患者様にも失礼になります。

鍼灸師としてベテランの域に入りましたが、これからも鍼灸、漢方、薬膳などの知識と技術の研鑽を続けていきますので、よろしくお願いいたします。

本当に、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

2025年10月13日