起立性調節障害(INOH)の鍼灸治療
起立性調節障害(以下OD)には4つのタイプがあります。
そのうちの一つ、起立直後性低血圧(instantaneous orthostatic hypotension: INOH)の鍼灸治療について解説します。
INOHは起立直後に強い血圧低下および血圧回復の遅れが見られるタイプで強い立ち眩みや目まい、動悸が出ることがあり、ODに最も多いタイプとも言われています。
鍼灸において各疾患の個別の治療法と言うのは存在しません(当院のやり方の場合)。
体全体の体質を診る弁証論治で治療法を決定するので、患者さんにより治療法と言うのは異なるので、ここに挙げるのは一例であることをご了承ください。

さてINOHですが、立ち上がらると血圧が低下しグラっと落ちるような感覚や倦怠感がある、これらは中気下陥によく似た病態です。
中気下陥の「中気」とは中焦(胃腸)の気を指し、さらに厳密に言うと脾気のことを言います。「下陥」とは下に落ちることで脾気が下がっていることを中気下陥と言います。
脾は食べ物の消化吸収に作用する臓腑で、脾で吸収した飲食物の栄養素を体の上部に上げる作用があります。これを脾の昇清作用と言い、脾の作用により人体の気血や臓腑は上に昇ったりその位置をキープできているのです。
脾が弱ると昇清作用が低下し脱肛、胃下垂、子宮脱など内臓が下に落ちると言われています。また栄養素が頭など上部に届かないため目まいや不眠、メンタルの不調があらわれやすくなります。
ODの症状でよくみられる低血圧や目まい、起きられないなどはこの中気下陥による「昇らない」と言う症状によく似ています。もちろん胃腸症状や内臓下垂といった症状が無いことも多いので必ず中気下陥の弁証が取れるわけではありませんが、考え方の方向性としてはあながち間違いでは無いと思っています。
中気下陥には「益気昇提」と言う、脾気を鼓舞し昇らすと言う治療をおこないます。
刮痧やマッサージより鍼灸が最も効果的な治療となるので、ODの治療では鍼灸治療をお勧めしています。
病院の検査で原因不明となる場合、目に見えない気血津液の運行異常による症状であることも多く、気血津液の調整で症状が改善する可能性があるので、症状でお悩みの方は一度ご相談ください。