不眠の鍼灸治療
不眠症は夜中に目が覚めたり寝付けないなど、質の良い睡眠が取れず日常生活に支障をきたすこともある症状です。
不眠は陰陽バランスの失調によるところが大きく、陰陽失調の代表的な症状です。
昼は陽が強く夜は陰が強い状態が正常で、朝と夜に陰陽の強さが逆転し日中は活動的に、夜は安静にするのが人体での陰陽の役目です。
夜中寝る時は陽は弱くなり、陰が陽を包み込むようにして安静状態を作ります。
朝方になると徐々に陰は弱くなり、陽が強くなり陰から抜け出し活動状態になります。
その陰陽バランスが崩れたのが不眠で、次の3つに分類できます。
①入眠困難(寝付きが悪い)
当院では布団に入り30分以上寝れないと軽度、1時間以上眠れないと重度と分けることがあります。
入眠困難は陽が強いまま弱くならないので、陰の中に潜り込めない状態です。神経が高ぶってたり、ストレスやイライラなどが強いと入眠困難となることが多くあります。
②中途覚醒(夜中に目が覚める)
寝てから2~3時間ほどで目が覚めてしまい、それを何回も繰り返すことがあります。
寝た気がしないため日中の倦怠感や疲れが取れないことが多くあります。
中途覚醒は陰の力が弱くて陽を包んでおけず、陽がスルリと抜け出してしまい夜中に活動状態となるため目が覚めます。
再入眠に時間がかからなければ問題ありませんが、再入眠に30分以上かかる場合は日中の活動に支障が出ることがあります。
③早朝覚醒
早朝に目が覚めてもう眠れなくなってしまう状態です。
これもどちらかと言えば中途覚醒に分類され、そのメカニズムも似ています。
入眠困難は実証・中途覚醒は虚証に分類され、両方の不眠が出ている方は虚実夾雑となっています。

治療法としてはまず陽を抑え、次に陰を強くする方法を取ります。
陽を抑えるために清熱をかけ上炎、熱化の状態を取り除きます。熱は上に昇る性質があり、人体の一番上にあるのは脳(髄海)と言う最も重要な臓腑です。
脳は安定・安静を好みますが熱の影響を受けると安静を保てず不眠やメンタルの不調が出てしまいます。
熱をある程度取り除いたら、陽を包み込む陰を強くします。
陰は睡眠で補充されますが、その睡眠が障害されているため自身の力では陰を強くすることが難しいため鍼や漢方薬で滋陰します。
このように陽の力を押させつつ陰を強くし髄海を安定させることで不眠症状を治療していきます。
陰の力はすぐに補充されるわけでは無いので少し時間はかかりますが、滋陰しつつストレスなどの外的要因を取り除いていくことで、睡眠の質は確保できるようになります。