機能性ディスペプシアの治療法
機能性ディスペプシアの治療は自律神経を整えることを目的に進めていきます。
ディスペプシアは胃には異常が無く機能が低下している状態なので、胃に活動の指令を送る自律神経が乱れているのが原因と考えられます。
もし胃に異常があれば、それは胃潰瘍や胃炎などの診断がつきます。
ここからは東洋医学の考え方で説明を進めていきます。
自律神経は交感神経と副交感神経の二つの神経で構成されています。
交感神経は体を活動的にする神経、「陽」に分類されます。
副交感神経は体を休ませる神経、「陰」に分類されます。
陰と陽は二つで一つ、常にお互いが同じくらいの強さを保つことでにバランスをとっています。
そのバランスが崩れると不調があらわれます。
「陽」が弱くなると「陰」が強くなるため、冷え、疲労感、食欲不振、息切れなどの症状があらわれます。
「陰」が弱くなると「陽」が強くなるため、ほてり、のぼせ、不眠、イライラなどの症状があらわれます。
このように陰陽のバランスが崩れた不調が「自律神経失調」の状態で、症状が胃腸に出ると機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群、慢性下痢となります。
東洋医学では体質により治療法が少しずつ異なりますが、鍼灸の基本的な治療をご紹介します。

①背中の吸い玉・お灸
背中には督脈と言う背骨に沿ったラインで経絡が流れており、背骨からは自律神経が分布しています。
督脈は経絡を監督・総督すると言う意味があり、督脈に吸い玉やお灸をすることで経絡の通りが良くなります(疎通経絡)。
気機の阻滞でおこるディスペプシアには、経絡を通し気の流れを促します。
冷えによって起こる場合はお灸で温め巡りを改善します(温通経絡)。
②首や背中の筋肉の緊張をほぐす
腰の少し上あたりは胃の裏になり、胃のツボがあります。お腹の調子が悪いと腰が張ったり硬くなったりすることがありますが、これは内臓体性反射と言う内臓の影響が筋肉の緊張として現れる現象です。
この硬い部分に鍼やマッサージをして胃に刺激を送ります。
③手足、お腹のツボに鍼
足には胃経、脾経と言う胃腸に関する経絡が走っており有効なツボも多くあります。
みぞおちや胸骨にある中脘・膻中は胃痛や胸やけ、不安感などに使用するツボです。
これらのツボに鍼を打ち、全身の巡りを調整し、間接的に胃腸の動きが正常化するような信号を送ります。
④冷えが強い場合はお灸
冷飲食の過剰により起こるタイプのディスペプシアや胃腸疾患には温めるためにお灸をおこないます。
吐き気や胸やけなどが強い場合は熱を加えると吐き気が増悪することがあるため、熱所見をみながらおこなうかどうかを決めます。
症状や体質により内容は変わりますが、以上が機能性ディスペプシアの鍼灸治療の一例となります。