モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

1.深く深く



「ずいぶんと深いすね」グロールの放つ声は主から斜め下に離れる。地底のそのまた底へ落ちて消沈していくのだ。

「緩いですが気をつけて」ジングの響く声。一度訪れていた詩人は声をかけながら音の挙動に興味をいだいた。

「両側と中央に狭い階段を置くだけで、あとは広くて緩い坂か。踊り場も多い。先には氷室と言っていたな、ジング」ガルーフは返事を求めない確認の言葉だけ使う。先頭を切って地底へ歩いている。運搬用の単純な作りの坂道であった。

 パーティは長いこと歩いた。続く勾配は疲労を強いるが、ヒューマンの意図の見極めは急を要することである。

(殺風景で無限みたいに見える坂だ)

 単調に歩む中ガルーフは思考する。

 通路の単調さはヒューマンの土木技術の正確さ、長大さはこの地方の土石の水準の高さを示すのか?

「氷室かあ。もっと寒いんすか。もう」グロールが槍を脇にたばさみ腕を抱えて騒ぎ出した。

「オークは北風の子、しっかりしろ。分かりやすいな、南の島暮らしめ」ガルーフが振り返らずにあざける。

「酷い。ガルーフ様は詰め襟、ジング殿は綺麗に着飾ってる。なんなんですかあっしは」腹と腕と足までむき出したオークの隊長は士官と詩人を指差して騒ぐ。

「しかし我々を気遣って勇気を見せ続けておられる」

「好奇心でついてきたのを後悔し始めてますよ……ああ、いいすいいす」ジングの外套を差し出そうとする動きを見てグロールは手を振った。

 だが寒さと暗さに当てられたグロールの頭の中は不安に浸かっているようだった。「ゾールとヒューマンの同士討ちってご存じすか」