「あっあれ、もしかして?」 「多分、頃合です。でも焦らないで」 「ああやっと違うものが見えてきた」 「お疲れ様でした」 「お前ら、相談した事は覚えるものだぞ。つまり静かにしろ」 「余りに退屈な旅だったもんで……すまんす。ガルーフ様。でもジング殿が潜った時は随分早かったみたいで」グロールは地底旅行済みの吟遊詩人に訊く。 「私は駆け抜けて退屈を紛らわしました」照れ笑い。「あとこんな場所をひとり歩くと闇が黒く重たい壁に見えてくるようで……」 「わかるっす。非常な威圧感、ありますよね……」 「はしゃぐのと肝試しが好きなのはよく分かった。ヒューマンの茶菓子も望みだろ? 腹がやぶけて戻らないくらい食えるといいな」 「親方は人の悪口が大好きで」 「私は、お二方のこの先の予想を聞いたらもう駆け出せませんよ。頼りにしてますし」 「やれやれ。着いたな。ジングが開けたのか?」 「触っておりません」 オークの恰幅に丁度よい隙間に既視感がある。錠前は見当たらない。ガルーフは地上の事例と同じと判断した。 近づくとオークの鼻頭に感じるものがある。 「中、冷たそうだな。だが風の動きはなさそうだ。詩人の耳はどう思っているか?」 ガルーフとグロールが押し黙って、ジングはつんと立った耳を何回か動かす。 「お二人が静かだと地底の音は全てないも同じです」 「気配はないっぽいですねえ。どうします?」先にグロールは両開きの扉の隙間を横から覗いて暗闇をひたすら睨み付けていた。 「まず現場の確認だな」ガルーフは言って二人を引き連れ氷室に入った。 |
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