モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

13.オークの安息の日



ガルーフは充実した伸びをした。両の袖がずり落ちる。ゆったりした病人着は心もとない。
「腹いっぱいになったら次は眠ればいい。楽な仕事だね。お前らもさっさと寝ろ。じゃあな」
 ジングが別れの挨拶を聞き咎めて、残るべきかとガルーフとグロールの二人に諮る。
「よせよ。と言いたいが愚痴だけ聞け。いま全く恐ろしくないんだ。ただ眠れたら死んでもいい、どんな恥をかいても構わない、ウルフレンド大陸全部が干上がったって構わない気持ちだぜ」
「こういう情けない気持ちに覚えがあると思った。空きっ腹をひたすら抱えてじっとしている時と変わらないんだ。この腹にしか気持ちが向かない」
「オークもヒューマンも生きている限りどんなことをしたって誰でも腹がすくのは止まらない。当たり前のことを満足に躱すことができないなんて元来あるはずがないと思わないか。俺だけ心の底から腹いっぱいになってしまって思ったことかもしれないが、オークの戦士たちが雁首揃えてこんな笑えもしないことをしている。ヒューマンの策が上手いか拙いかは別として、俺たちはずうっと飼い慣らされてるんだ。最初の一歩を踏み間違ったんじゃないか、将軍よ」
「生かすべき人柱が自由に喋る」ガーグレンはそれだけ返して去った。従者たちが鎧を鳴らして続く。
 そしてジングがガルーフを再び気遣ったが、相手は「どうでもいいくらい眠い。言ったろ」寝息を立てた。
「熱弁を振るったと思ったら。あっさりしてなさる」グロールが目を丸くする。
「この期に及べばぬしらのできることは全くない。どんな恐ろしいことになるかも知れぬ。素人の客は要らぬよ」ゲーリングが食卓に次はオークのポーションを並べている。
「そうそう!」ガルーフがまどろみの世界から相槌を打ったが、現実に発声できたかどうかは定かではない。