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10.殉教



 こわごわ出ようとしたジングを待たず出入り口が自分で開いた。

「いつでもどこでも我輩の目を逃れようとも暴れ散らす。いつまで不良少年を演じるつもりか知らせてほしいな」ガーグレン将軍は従者たちの動作を待たず自ら入ってきた。

 給仕詩人は再び慌てふためいて腰をかがめ恭順の姿勢のようなものを作った。グロールもゲーリングもすぐ頭を下げて畏れをなした。

 ガルーフはヒューマンの清潔な床を蹴った。後ろにあった、ヒューマンの貴人用のベッドへわざと音を立てて乗った。ガルーフが信じられぬくらい上出来な寝床はオークの重い腰を心よくふかぶか受け止めた。

「確実な死を座して受け止めるのが最高の戦士のありさまだとか我輩の前では言ったな。長々と芝居がかっていた」わざともったりした態度を取り、ガーグレンはガルーフを嗤う。

「言ったさ。理由を付けなければゆっくりと死ぬなんて出来っこない。しかし付けることは出来なかった。みっともない姿を見せたのだけは謝りたい気持ちだ。しかし俺はやるぞ。将軍は安心しておけ」

「またくだらん芝居をする。ここに来る時も長々した新しい理由が聞こえた気もするな」ガーグレンは自分のあごをなぜる。ガーグレンが先程から蓄積しているわざとらしさ、それは若い毒見の癇に触りつつある。

「ただ我輩が言いたいのは、騒ぐな。兵に気取られる。それだけだ。さもなくば死体へ変わったあとも酷い目に遭わせてくれる。貴様の辞世の生兵法など聞く耳は人っ子一人おらん。耳は持たんが目がある。一刻も早くガルーフの断末魔が見たくてここへ集まっただけさ」

 ガルーフは即怒髪天。「生兵法の続きだ。ガーグレン殿がヒューマンを裏切る前に俺が貴様」そばから袖―――ガルーフは先ほど病人服に着替えさせられている――を力強く引かれた。無言のグロールであった。顔を強く左右に振っている。さらに正面にゲーリングが立つ。

「言ってしまったからには何がなんでも戦士の義を守らんか。まさに死を迎えるまで。旗手のガルーフ、そも汝は軍をどこへ導くために誓いを立てたか。おまえは既に殉教した。今もバランの炎のまなざしを感じるであろう」

(さすがにガルーフ様に分はないですよ!)グロールは小声も使ってガルーフを制止し始めた。

「私も詩を贈ります。戦いによらぬ真の戦士の詩です」

「喜劇だろこれは……」ジングにひとこと言ってガルーフは食事を始めた。