モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

7.戦力と戦術



「詩人さんが本当に演奏で戦うなんてびっくりす」

「ええ。獣や虫除けの旋律に逆に誘いの旋律。うまくすれば眠りの旋律も通用するでしょう。この地ならば」ジングは周囲の静かで冷たい空気を見渡した。

「いま思い付くのはこれくらいです」「すげえ」グロールが人懐っこい目をさらに丸くした。

「犬笛なんてのは聞いたことがあるが戦いに使えるとはなぁ。驚く。わざわざ軍隊に入ってくるはずだ」

「いえ、兵隊の皆様の力にかなうものではないですよ。例えば足音とか」ジングはガルーフに笑って返してきた。

「聞こえなきゃあしょうがない?」聞いてグロールもくすっとする。

「ふむ」ガルーフは連日の行進の大仰さを思い出した。こんな地の底にオークがたった三人というのは想像もしていない状況だった。

「しかし期待しているぞジング。そういう匠と一緒に戦えるのは初めてで光栄だし楽しみだ。グロールはどれくらい自信がある?」ガルーフはオークの隊長の抱えるスピアを指した。

「詩人さんの後じゃ恥ずかしいだけです。しかも地上でガルーフ様にとどめを勘弁してもらっちゃって。配下の奴等もガルーフ様には心服してますから、地上の荷も守られているでしょう。それは大丈夫」

「長々と卑屈になるなよ。シャーズに混じってオークの誇りを海に叩き落としてきたか」ガルーフは景気づけだとグロールの肩を叩いた。「あいた」

「よし、それぞれ戦えるな。三手に分かれて探索だ。俺が真ん中をゆく。グロールは右の壁を目指せ。ジングは左。何か見つけたらとにかく中央を目指せ。もう一度言うが、腹が鳴っても任務は終わり」

「本当に? よろしいのですか」ジングは自分のポーチを探ってダガーを握りやすいように用意する。

「いいさ。また言うが、空きっ腹で討たれるオークなんて南まで来た甲斐がないだろ」

「まあ、なんかここも大したことなさそうな? ブルガンディみたいな奇怪な平和があるような……」グロールは三人の明かりを新品に取り換えた。新旧の炎が立ち上らせる影たちの揺らめきがこの広大な地底に狂乱した。その目立つ動きにジングは不安と不吉を覚えた。

「細々悩まずにオークらしく戦うさ。敵に会ったら《ヴォラー》をぶっつけてから走れ。オークの吠え声を聞かせてくれたら俺も何があろうと駆け付けてやる。猪の化身みたいにな」

「《ヴォラー》」グロールの呼応。ジングも合わせる。

「せっかくだからジングには歌曲をやってもらうか」「いきなり無茶をおっしゃる」グロールはあきれた。

「敵が現れるのがより楽しみになるだろ?」

「慎重か豪胆かよく分からないお人ですが、味方に有利な場を作るのも詩人の技術です。演目はなにを?」

ガルーフの頭にぱっと浮かんでいたのは、「反乱王グレード」