ガルーフは素早く抜刀した。グロールもつられて槍を構えた。「ぶつからないようにお気をつけて」ジングがなだめる。 「ふん、スライムと思ってしまった」ガルーフが笑う。 「いやあ、いいお肉さんのお出迎えでしたね。ヒューマンは普段なに食ってんのかな。シャーズ料理なら得意なんですよ、あっしは」鉄柵にずらりと陳列された生肉。グロールは槍で検分を試みようと、 「毒槍になるならまだしも、呪いを受けたらどうなさいますか」とジングに再び止められた。 ガルーフは食肉の前でサーベルをひらひら振るった。挑発を試したのである。 「奥のモンスターの餌ではなく、こいつら自体がアンデッドかもしれん。フレッシュゴーレムの出来損ないとすればおぞましいな。うおっ!」 「まだ食える可能性だってあるでしょうに。そういや腹減ってきた。なのに気持ち悪いこと言って。……なにかありました!?」ガルーフの叫びをグロールとジングは追う。 鉄柵から視線を外して奥に向いたガルーフであった。その瞳に天が入ってきたのである。 グロールも感嘆の声を上げる。「高い天井!」地底の岩の棚を支えるべき逞しい柱が規則正しい列をなす。氷室はまさに広大であった。 「大したものでしょう。けれどヒューマンのことはもう褒めていませんよ。例えばあの柱をご覧ください」言われた二人があごを少し下げればジングが要らしい柱石を指している。 驚くべきものである。女性の像がそのまま柱の高さで浮き彫りにされている。自分たちの姿と似つかぬと観客はひと目で分かったがそれでも美を解した。 長い髪の分け目から触角が伸び、ゆったりしたドレスの背からは網目走る翅。 「素晴らしいイリスの御姿」ジングはこうべを垂れた。 |
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