ガルーフはオークにしては体が大きかった。休み知らずにトング麦を植えられるのは農夫の子として家族を笑顔にさせるが、それだけでオークが富むなど有り得ない。四人の兄ともども立派な牙の付いた食べ盛りの口は逆しまに家を傾かせる。 ――逆境にあるオークの肉体、精神を詩に飛ばすこと盛ん也 オークが怨みを載せる悲劇詩はエルフたちの草笛のような学問詩と体系が異なるものだから、ガルーフたちのような無教養村であろうが誰もが頓着なく玩ぶ。というより空腹の代わりに元手無く心を満たし友と合唱して明日を戦う気にさせる貧者の大切な娯楽であった。 また知識と経験に詩作術と発声術を飛躍させ吟遊の玄人と化すオークも多い。先に述べたごとく詩吟は荒涼ブルグナにおいて独自の文化に高まっていたので、どの土地でも重宝され生活に融通を利かすこともできる。また軍隊からの招きもあり慰安だけでなくその頭脳を用いる助言者として高遇をもって従軍を求められることさえあった。そうした旅から新たな霊感を得て更に歌を創り上げる。迷宮の危険な取材の見返りに実物の財宝を得ることもある。 子供オークには泣きどころの分からぬむつかしい詩より詩人そのものが夢をかき立てる。詩人がたまに村に寄って柱の傾いた酒場で朗々叫んでいると声が漏れ出ると言い訳してみんながただ聴きした。 あくる朝となればあちこちの家の畑から幼い声たちがその記憶力と声量を思い切り戦わせるのが通例であった。 昨夜は『反乱王グレード』はとうとう演らなかったのでガルーフが大きな体を揺すって生まれる大反響を聞かされずに済む。子供たちはにやにやしつつ安心していた。しかし当人の声は低く落ち着いていたのだが、内容を三角の豚耳に入れてみて誰もが驚いた。 |
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