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12.狩りの再開



 オークの軍団が浮き沈みしている。険しい起伏を所有する山中において行軍は難を極める。延々列をなすオークの粗末な軍靴たちが土を踏むたびに塵芥が巻き起こる。本土ブルグナは長年の無理な開発が祟りをなす土地であったが、それ以上に作物の根付かぬ死の場所と思われた。兵隊たちの顔は暗く煤けてゆく。

 行軍の遠くに硫黄を吐く火の山があって、それが灰の元締めらしいことを傍らのガーグレンが勝手に喋っていた。火山灰を嫌がる将軍を見てガルーフは心の中で笑った。そして見ること能わない火のるつぼの威容について思いを寄せた。危害及ばぬとはいえ、はるか向こうから悠々オークを呪ってくるものとは何か。人智の及ばぬ場所にはその驚異を養分として相応のモンスターが陣取る、というのは狩人ガルーフと兄たちの見出した独自の法則であった。果たして行軍の先に狩りを再開する日は待っていようか。若者は旗の手綱をとるこつを五体に覚えこませており、再び精神に暇をやっていた。


 ガーグレンが腕や抜き身の剣をよく振るうようになった。ガルーフの息も荒い。大勢の早い足踏みを許容する土地を先行し調べて回った上で旗を振るって兵を誘導する。再び仕事は厳しくなった。土地のことに重ねて兵にも問題はあって、以前ガルーフが雑兵の中にあった頃ぽつぽつ見かけた老兵が目に見えて遅れはじめた。逆にガルーフのごときであった新人も逸るばかりにたたらを踏んで結果を同じうした。問題層が行軍の途中でトングのパン生地みたいに硬くなると働きのいい壮年兵の軽蔑を買う。そしてガーグレンが軍中に轟く怒号を発する。抜刀させた使いの者を後ろに遣り、ガルーフには旗振りをやらせて全体を急かせた。


「始めから列と兵の中身をきちんと分けたらいいんじゃないのか」ガルーフの素直な文句には相手の素直な蹴りが返ってくるものだ。

「礼儀を直す気がない連中はどうせ乱れる。揃える時間より足を進めるほうが得、分かるよな無礼者」馬の力を借りられてガルーフはよろめき耐えるしかない。

 オークの短い脚と厚い脂肪には山岳はいよいよ厳しく、汗だくの軍の気持ちは荒れた。だが殺気は仲間の内に向くだけではなかった。ガーグレン殿が見張りを増やす気配もなかったのだが、ガルーフの戦士の勘はオークの毛をまたちりちりと逆立てさせていた。


 背後から肩を柔らか叩かれてガルーフはかえって警戒した。相手が下馬し綱ひくガーグレンであったから更に度肝を抜かれた。

 また旗を下ろして良いと言うのだ。傍らに長弓を捧げ持つ従者がいてガルーフに持たせようとするのだ。それはガーグレンが既に構える弓の予備であった。

 射撃戦用意。