危険を帯びるブルガンディであったが、シャーズの耳目はひたすらノルドン地方に伸びる。シャルンホルストの掃討作戦さえ成功すれば組織力なぞ頭にもないゴブリンども、反乱はただの一回で諦めがつくだろう。商人たちに新たな夢が生まれた。戦後の北東世界の再編、同志シャーズたちをいかように出し抜くべきか。 しかし準ずるものとはいえそれは戒厳令であった。あらゆる種族の行動を制限する。ゴブリンのむごい壊乱に対してシャーズ衛兵の苛烈な動きがあったが、市民は黙認、やむ無しな気持ちで迎えた。貴族たちも押し黙ったまま捜査を受け入れつつある、しかし、一斉検挙である。 違法使役・反乱幇助・国家転覆。イエロス家などのそうそうたる名簿が新聞に公表され主だった者たちは軟禁沙汰待ちとされ大した影響のない者に大罰がくだった。 かくて議会はカール茶を片手にゆったりと戦場を眺められるようになったのである。シャルンホルストも勝った。当然のように勝った。シャーズ海軍は搭載する火砲の正確な記録と大陸全土への威を手に入れた。作戦を終結させたシャルンホルストはひとり静かに軍帽にどくろを染め抜いたという。 ゴブリンの乱の終息を待たず動いたのはヒューマンのケフル諸国である。今回の案件は平和の美名を借りた天下争乱であると。元締めである法則派を断固弾圧しこれが流民の騒ぎを生んだ。亡命先に南のエサランバルの森を選ぶ者が多かった。 平和と美と調和。流麗な言霊に生きるエルフの永遠の都。辿りつけぬままに倒れる者たちを見過ごしもしない徳の国であった。その花のかんばせのエルード女王は頭上の花冠を用いて表紙を編んだ質問書をしたためて北のヒューマン諸国に送った。 そして。 |
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