「でかいな」 (鎧だ) 笑い者になって野営地のなぐさみと化すのを恐れたのがかえって良くない。行方をくらますか頭を下げてごまかすか考えあぐねて身を引き締めざっと引くのがやっとだった。目に入れたのは鉄を組んで造った勇壮な影で、 「次いでに槍を構えていたら首を飛ばしてやったが」 ガルーフは槍を地面に寝かせてひざまずく。鎧武者は近づく。 「若く田舎めいて窮しているな」夕闇に眼を凝らし豚鼻は唸ってこちらを嗅ぎつけた。「言うことは無いか?」 実に面倒げな調子だったので急いで自分の名を告げた。 「知らん。無駄な名だな」声を立てて笑われた。 狩りの記録と苦労と勝利、頼りになる兄たちや村のパーティのことを一気に吐き出していた。言葉を矢として狩ってやりたい壮年の鎧武者の周りに、似ている堅い雰囲気の者たちが無駄ない動きで集まってくる。中心になった壮年がひとたび大きく笑うと周りもぴったり合わせて慣れた調子でガルーフをさんざんあざけった。 自分の周りを故郷の軍団でしっかり固める。のろまな奴らにはしつけられた馬を与えこれから入ると聞く山道を一跳びに駆ける。ケフルとかいう名のある城を囲む。勢いに乗れば正体謎のヒューマンだかいう将軍どもをきちんと懲らしめられる。 言葉は激情のまま飛躍していく。 |
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