従軍吟遊詩人の喜劇詩よりおかしいと、軍人でなくてもこの笑いが分かってガルーフの一大征伐案は囃され野営地は陽気にさんざめく。 「貴様の頭の中なぞ誰も必要とせん。代わりに、このウルフレンドにオークが最も栄え最も広い地を占めることを頭にぎゅうぎゅう詰めておけ。オークの真髄は方陣の突撃に有り。逞しい肉の波々がヒューマンの砦を幾度押し潰してきたか」 勢いに乗る壮年のオークが迫力のある腹をばんと叩く。大仰な演技、それを讃えられる姿までよく心得ているよ、とガルーフは思った。窮地に陥るほど頭を冷やすようにして、いつも危険な狩りから家に還ってきたのだから。 「口のホラが頭の無学と混じり合って出来上がった嘘吐き者、狩りの履歴などと。所詮全てがでたらめの恥知らずだろう」 家族とともに困窮に打ち勝ち解体して口を糊してきた暮らしを嘘と断じられれば、さすがにオークは短い鼻を鳴らして名誉の決闘を申し入れる。だが、ガルーフ、実行はしなかった。この人だかり、自分以外の多数のオーク、命を捨てる狩りなど有り得ないことだ。しかしこちらが動きを止めても相手は違う。地面の槍を用立ててしまうべきか、ガルーフは一瞬牙をきしませた。 そこへ壮年の鎧武者が一気に攻撃した。 「貴様はこれから旗手だ」 |
|