モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

9.召し上げ



「過去はどうでもいいが貴様には興味が湧いた。未来はすでに我が輩に預けていたよな。明日からせいぜい笑わせろよ」歓声はすでに周りを包んでいたが、一層声が高くなった。そして、「わしはガーグレン将軍」

「誰だって?」歓声を吹き消してしまって、訪れた静寂にさしものガルーフも驚いた。オーク大将ガーグレンの獣面が闇の中で一瞬だが強く歪んだのがガルーフの眼に否応なく入っていた。


 しかし、「頑張って反撃したものだな。さすがオークの戦士だ」

「本当に知らなかったのだ」すると大きく舌打ちされた。「いっぱしの面をするようなら叩き斬っていたものをな!」

「旗を持てば槍隊はどうなる」話しづらくてかなわなかった。将軍様の面子など知るか。ガルーフはどうにか固辞したかった。この一瞬一瞬の気まぐれに短い生涯を捧げる気はない。

「やはりいんちきな戦略しか舌に乗せぬ最低の取り繕い者だったか? 槍より旗を用いた方が小利口様の近道だと我が輩は拝察するがね。その地面のぼろ枝で弱くてずるいヒューマンを何人ばかし突ければ上等に死ねると思うか?」あごでガルーフの近くの土を指す。


(持てる奴が偉いと言いながら偉さをかさに更に取り上げてくる)

 ガルーフの故郷にも羽振りの良かった者は確実にいた。しかしこの聖戦という日常破壊の災害にぶち当たって家畜やらさまざま召し上げを食らってみっともない泣きっ面を晒した。自分のかなわない相手の更にかなわない相手とはなんだ。ガルーフは思った。

「都の強い槍を取り上げてぼろと勝手に取り替えたのはお前らだろうが!!」ガルーフはがっと前に出ていた。

 自分が驚く奇襲だったからガーグレンに右拳がしっかり命中した。ただしガーグレンの顔面ではなく左篭手である。やすやす防がれた。将軍は手の重みを楽に振りほどいてガルーフは姿勢を崩す。次いで向こう方の右篭手が伸びてきた。ガルーフの腹に思い切り叩き込まれた。「本当の馬鹿か」ガーグレンの呟きが聞こえた。