はじめは地を埋めつくす兄弟たちに高揚を覚えたが、見ものは只のそれだけ。ガルーフが歩かされる時、どよめきと一緒に前をうごめく不揃いで煤けた兜たちも揺れ動く。きちんとした鎧をつける少数の監督士官が隊列の横を怒鳴りちらそうとも歩みが容易に揃わないのがこのオーク軍であった。一日中足踏みさせられているような感覚が勝ち気なガルーフを大いに苛立たせたが、彼よりも短気な者たちの愚かないざこざをたくさん目にすればむしろ心が醒める。 ――オーク軍、ブルグナを経ちクルアフを通りケフルを目指す模様 東のシャーズ対ゴブリン、南ではエルフとどうも異種族の仲が大いに乱れつつあるらしい。誰の目にも宿敵ヒューマンを囲んで討つ機会に見えて、オークの首脳たちは喜びに吊れる唇を隠し密かにことを進めた。選びぬかれた最良の日にオークは堂々たる復讐のクエストを始めたのである。やはり、先の出兵より十八年を数えた日のことであった。 狩人のガルーフが素晴らしい視力で朝から期待をかけてのち足の裏でひたすら目指していた場所。それがようやく迫ってきた。 (今夜はここが宿だろう) 天も地も夕べの眠たい色に変わりつつある広い平地。まだ後列に残る大量の兵隊も暗がりの事故を恐れて足を早めていることであろう。 軽々しい徴兵検査で巨体と血色のよさを買われたガルーフは最先陣に仕分けられていて、本人も生業と同じようなものだと理解した。 しかし前にいようがまったく戦争ではなかった。地響きみたいなオークの軍靴の音の前に身を現すバーサーカーもいまいが。 クルアフ、という山道に入るまでは痛んだ足にお給金が出るものだと歴戦の老人らは言う。行軍の具合によって彼らとは出会ったり離されたりする。 |
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