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11.オーク出撃



「よし決まった。先鋒以外は陣において待機の構え。ただし前方でなく四方に注意せよ。エルフの軍は遊撃こそ王道と聞いた。では解散。ヴォラー」

「ヴォラー」将軍ガーグレンの後を受けてオークの部将たちは口々に唱えた。そして次々と天幕を去り、その際背の高いでしゃばりの顔をじっくりと眺めていった。

 図体のでかい旗持ちは自分の顔の上を通りすぎてゆく視線をなんの気なく見送っていく。その仕事がようやく終わると、自らも歩き出した。

「よう、いい機会じゃないか。お手柄のさ」未だに席を立っていなかったのは、今しがた先鋒を仰せつかった部将である。

「殴っていいすか」「えっ?」ガルーフはグロールの言に失笑をこぼしてしまった。「あ、ああ。いいとも。鼻血が出ようが殴り続けていいぜ」

「やめました。そんな価値ないですもん」「そ、そうか」(おっかねえ)ガルーフは心のなかに冷や汗をかいた。

「一応言っておくが、もちろん一緒に戦うからな。陣地に鼻血をたらすよりよっぽどいいだろ。命令してくれたら、俺でも誰でも好きな奴の血を好きなだけ流してやるさ」ガルーフは胸に自分の拳をあてる。

「あのですね」グロールがじろっとした視線を飛ばしてきた。「旗手どのが余計なことを言うから食糧官のあっしが酷い目にあってるんですがね、もっともっと余計なことなさりたいですか」

「あっ、はい……」ガルーフの口から苦笑が飛びだした。

「ついてきてくれなくていいです。味方は他にもいますから」

「へぇーっ。誰だよ。神官や詩人は戦えないだろ」

「やっぱりそれしか知り合いがいないんすか? だめですねぇ、田舎者は」

 ガルーフは笑って、「田舎者で悪かったよ。てことはブルガンディの人間だったりするのか」

「ほお、ふん」とグロールも鼻を鳴らす。「さらに言うと手だてもありますから。エルフをやっつけるためのね」

「へぇーっ。やっぱり大したもんだなあ。どんな作戦だよ」

「人脈に作戦。これくらいはいつも頭の中に持ち歩いていないと部将は務まりませんや。せいぜい旗持ち止まりです。おわかり?」グロールが指を差してきた。鼻を突かれるかと思いガルーフはあとずさった。「じゃあ備品を請求してきますから。これにて」グロールは天幕をさっさと出ていく。

「何をもらうっていうんだ? とにかく、頑張ってこいよ。万が一のことがあったら、俺が奥さんと子供に伝えてやるから!」

「まったく! あんた、字なんて書けないでしょうに!」グロールの背中が遠ざかりながら言う。

「これから勉強するさ!」

「時間のある人は、いいですねえ!」

「それから全財産をはたいて、香典代にしてやる! ゲーリングのじいさんに頼んで、豪勢な葬式を挙げてやる!」

「はいはい!」グロールは数多並ぶオークの天幕の彼方へ隠れて消えた。