「……ダムドとナーダがエサランバルの弓と矢でありますように。ダムドとラスィがエサランバルの弓と矢でありますように。ラスィとナーダがエサランバルの弓と矢でありますように」 「そしてダムドとエルサイスが誉れ高きエルードの弓と矢であることを」エルサイスの詠唱は終わった。 「おめでとう兄さん」ナーダの言葉が終わらぬうちに場内のエルフたちは拍手を始め、自らの姿を万雷の喝采で包むのだった。 「おめでとうお兄ちゃん!」ロリエーンも自分の小さな手のひらを破らんがばかりに騒ぎたてた。ナーダの兄ダムドはエルフの将軍エルサイスのもとへひざまづき感謝の言葉を述べ始める。 「……ロリちゃんお行儀が悪いよ」シグルド。「だって眠いんだもん!」ピンクのエルフは寝そべって遥かな青天と向かい合ったまま拍手を続けていた。 「ダムドは副将軍かぁ」突撃隊長シグルド。「なにも変わんないけどね。元から威張りんぼうのおこりんぼだから」ロリエーンは自分の言葉ににんまりとする。 「でも田んぼや畑はたくさんもらえるよ」「あっそっかあ。いいなぁお金持ち」 「ロリちゃんはなにも植えないからだよ」「だって面倒じゃないのよ。お米が自分で水を飲みに行けばいいのに、気が利かないんだから。ロリちゃんが遊びに行けないよ」 「モンスターや動物を馴らして世話させるんだよ」「しつけに時間すごくかかるじゃない。けっきょく面倒を見てあげるの、変わんない」 「じゃあ田んぼを誰かに貸し出せば」「契約めんどくさい。相手の子が得しそうでロリちゃん根詰めて考えちゃう」 「貸すほうは楽に儲かるんだからそれだけでありがたいと思うんだけど……」「しつこいなあ。あーそうだ、ロリちゃんは植物がかわいそうだと思うから耕したりしないわけよ。食べるために育てるなんて理不尽な行為よ。ねえ?」 「ロリちゃんは食べなくても生きていけるんだっけ?」「あー、シグちゃんらしくない嫌な言い方を……」ロリエーンは苦い笑顔を浮かべた。「そりゃエルフといえど死ぬし命の環からも抜け出せないけど」 「ともかく、ロリちゃんは面倒なことは人にやってもらうの。やだ、ロリちゃんも将軍の素質があるかもしんない」ダムド副将軍はエルード女王の館の玉座の方角へ深々と頭を下げた。 「ともかくロリちゃんもそろそろ人生設計は考えたほうがいいよ」「またぁ。……うふ、シグちゃんってばヒューマンのおじさんみたい。あーあ、また遊びに行きたいなぁ、ブルガンディ。戦争だからエルフは入れてくれないんだろうなー。闘技場にシュラって強い子がいてさー。ああ、おじさんじゃなくて子供なんだけど……」 |
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