モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

8.エルフの布陣



「はいっ。先陣はシグちゃんがいいと思います!」「えっ!!」

 エルフの参謀サーラはロリエーンと突撃隊長シグールドの表情を見比べて言った。「はい、次」

「だめだめ、だめよ」ロリエーンはサーラとシグールドを見渡す。「ここらで手柄を立てないとシグちゃん一生うだつが上がらないよ。エルフは誰も年取らないんだから若い子が不利すぎておかしいよ」

「またどこかよその国の考えを持ち込むのね、ロリエーン。エサランバルからお出かけしてみれば平の突撃兵さんが隊長に指図できる世界にたどり着けるのかしら」

「オークとヒューマンが協力してかかってくる時代だってエルシーは言ったじゃん。エルフもなにか変わったことをしてやらなくちゃ勝てない、ロリちゃん変な焦燥感があるのよ」「だから突撃兵さんの個人的な感情を森全体に及ぼさないでくれる」

「エルシーがオークちゃんどもの小手調べをしたいと言うのであればシグちゃんの適度な強さはまさにうってつけだと思うんだよ。シグちゃん相手に嵩にかかって奥の手を出してくるかもしれないし、シグちゃんが手強くて奥の手を出すかも。適度な弱さと言うべきか」ロリエーンは身振り手振りを交え思いのまま話を続ける。

「もしかしてロリちゃん、さっきぼくが言ったことを怒ってるの?」「さっき? なんだっけ? このロリちゃんに楯突く気概があるならそれはそれで、とっても良いことよ。オークにもそれをぶっつけておやりなさいな」

「オークの装備はふぞろい、練度は低い。普段通り隊を動かせたらやれる相手だと思うけどどうする?」シグールドには酷でロリエーンには癪だと思いながらサーラは話を振ることにした。年若きシグールドはサーラのほうを向いた。「なにか作戦案があればこのままお任せするわ」大将エルサイスはうなずく。時間は差し迫っている。

「なんのためにいるのさ参謀ちゃんは?」すかさずロリエーンが口をはさむ。「戦うのは本人よ。参謀は手助けしかできないと知っておいて頂戴ね」

「ロリちゃんはちゃんと責任を取るよ。シグちゃん、二隊で戦わない? サーラにたくさん兵をもらおうよ」すかさずサーラはロリエーンの耳をつねった。「やっぱりさっき言ったことを忘れてるじゃないのよ! シグールドの発想を縛らないで頂戴」

「シグちゃんにちゃんと助言してあげたんだってば!」ロリエーンはひとしきり暴れて自分の耳の安全を確保した。

 結局のところ作戦は、正面からオークと打ち合って力を計るという当初の方針とあまり差のないものになったが、ロリエーンはエルフの大将と隊長の実直さをそこに投影して満足したようである。シグールドが窮地に陥った時の援兵を志願し首尾よくエルサイスに受け入れられることもできた。弓隊長のナーダも積極的な援護を願いでて、なおかつシグールド隊の行動の前に別に試みることがあるという。