「なんだ。俺たちに北への道を塞がせておいて、あいつだけもう一歩北へ下がって高みの見物か」 (これこれ! さっきの話はただの予想、鵜呑みにするでないわ!)ガルーフの足元に小石がよく転がってきた。そばに馬の鼻息。ゲーリングの巧みな馬術を意に介せず、ガルーフは主張を続ける。 「それで、お前さんはグルルフ将軍様になったのか」ガルーフは隊列の先頭の人物を指さすと、人物はサーベルを抜いて構えた。 「将軍閣下がヒューマンの軍に方針を伝えるため下がられたのは幸運だったな。命令をもらったならその汚い言葉を撒き散らす素っ首なんぞ、一瞬でエルフの土地に置き去りだ」 「グルルフ様のおっしゃる通り。ガーグレン将軍やヒューマンの大将殿はお主みたいなのにだって作戦をつまびらかにせにゃならん。それが同盟というもんじゃ」 「開戦にあたっての高僧の自己犠牲なんてのもバラン神は歓迎なさるやもしれませんよ。ことにゲーリング殿は口が達者でいらっしゃる」 「こ、これはおたわむれを。祭祀を取りしきる者から先にいなくなるわけにはまいりませんで、平に平にご容赦を」ゲーリングは馬の動きを止めて何度も頭を下げた。 「ガーグレン将軍様はさっきの偉いさん同士の褒め合いをもう一回やってくるわけか」ガルーフは首を振る。 「ああそうだよ! その後ヒューマンの隊列が我々を追い越してくるぞ。山の中でエルフとやりあってくれるためにな。交通整理はきちっとやれよ。しくじれば命令がなくても貴様の首をすっ飛ばせる」グルルフは剣を構え直す。 「はいはい!」ガルーフは指揮官代理グルルフの元へ駆け寄った。 |
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